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曽和利光の就活相談室 「学歴フィルター」まだ存在すると思っていますか

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第11回は就活生がもっとも気になる「学歴フィルター」についてです。
曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

「学歴フィルター」という言葉があります。企業側が大学名を使って学生をふるいに掛けるようなことを指しますね。今回はもう少しこの言葉について掘り下げてみます。果たして学歴フィルターは厳然として存在するのか。「ある」という感覚を持っている学生も少なくないでしょうが、実はその感覚はかなり一面的で、むしろ幻想に近い部分さえあると思います。

「分母」そのものが上位校偏重

「そうはいっても、人気企業の内定を得ているのは有名大学の学生ばかりではないか」「やはり大学名に基づいて採否を決めているのではないか」と思いますか? これまでも触れてきましたが、採用活動の費用対効果を意識する企業側としては、リクルーターの派遣や説明会の案内などで、すべての学生に平等にアプローチできないのは事実です。短期決戦となった今年の就活戦線では、企業側もリクルーターの活用を増やし、結果的にこの「不平等感」が高まっている面もあるでしょう。それでも、大学名で採否を決めるような差別は、ほとんどないと断言できます。

多くの企業の人事担当者に共通する本音があります。「いろんな大学の学生を採りたい」「ふたを開けたら『早稲田・慶応』ばかりでは困る」。総合商社や大手電機メーカーなど、人気企業といわれる企業でも異口同音です。各社とも東京に限らず、地方の大学にも食指を伸ばしていますよね。昨春の北陸新幹線の開通により、石川県あたりで説明会を開くケースはぐっと増えています。

なぜそんな本音に反して、企業が学歴フィルターで上位校の学生のみ選別しているようにみえるのでしょうか。特に大手企業・人気企業の場合、そんな風に思われがちです。そうした企業についていうと、就活生のうち上位校の学生が占める割合がかなり高いことが大きな理由といえます。一部上場企業の募集枠はおおむね10万人の規模ですが、いわゆる旧帝大や早慶、上智大学といった有名私大の就活生だけで、3万人ぐらいには達してしまいます。それらに次ぐレベルの上位校まであわせれば、一部上場企業の採用人数のうち相当程度を占めることになります。

学生の人数を考えたとき、東京大学や早慶上智を頂点として下位校に向けて裾野が広がるピラミッドを想像してしまいがちですが、実際は「上半身」のほうが重い構造になっています。国立大の学生では、東大の人数がいちばん多いですよね。結果として、「上位校ばっかり」「東大だらけ」といった見た目になりやすいわけです。背景に就活生の人数の差、いわば「分母」の差があることは無視できないと思います。もっとも、かつては確かに大学名によって選別していた時代もあったので、その残像が幻想として残っている面はあるかもしれません。

多様性追求に3本の軸

企業側の本音が「いろんな大学から採りたい」になっているのは、近年注目されているダイバーシティーの考え方が影響しています。人材の多様性を高めて組織を強化するわけですね。全社的に適材適所を進める人材ポートフォリオの考え方が浸透し、人材ニーズも多様化しているため、さまざまな人材を採用するようになっている面もあります。私の勤めていたリクルートでも、以前はとにかく営業としての適性を問うていましたが、今は営業トークがあまりできないような人材も採っていますよ。

どんなダイバーシティーを企業側が意識しているか。ここ10年ぐらいの流れをみると、まずは「グローバル」という軸が挙げられます。国際基督教大学や国際教養大学、立命館アジア太平洋大学、各地の外国語大学などといった大学に企業側が視線を向けるようになりました。その次に出てきた軸が、主にIT(情報技術)関連の「エンジニア」です。東京電機大学や電気通信大学といった大学、さらには高専や専門学校の学生まで求める傾向が強まっています。さらに最近目立つ軸として、芸術大学などの「クリエーティブ」を挙げてもいいでしょう。米アップルなどの成功をみて、デザインが重要だという認識が浸透してきたんですね。もっとも、芸術系の学生には「就職したら負けだ」みたいな雰囲気もあって、採用しにくかったりもするんですが(笑)。

そのように、いわばスペシャリストが求められるようになったことを考えると、学歴フィルターはなくなったというより、専門性によるフィルターに形を変えたといったほうがより正確かもしれません。大学名ではなくとも、学科や専攻による選別はあり得るということです。逆にいうと、例えばこれまであまりエンジニア関連の専攻の学生は採らないと考えられた業界の企業が、そうした学生を求めているというケースも着実に増えてきました。自動化による人件費削減を進めている食品業界などは典型的ですね。

学生側に「自主規制」も?

いずれにしても、学歴フィルターとして指摘されるほどには、学校名による選別はおこなわれていないのが実情でしょう。それではなぜ、そんな幻想が残っているのか。これには学生の側で自主規制のようにフィルターを意識して、選択肢を狭めてしまっている面もあるとにらんでいます。選考の結果「東大早慶」しか残らない、という問題以前に、そのレベルの学生しか受けにこないといった悩みを、業界トップ企業の人事担当者から聞いたこともあります。説明会に申し込めなかったりしたときに、「この企業はうちの大学からは採らないんだ」と思い込んでしまうのでしょうか。すでに指摘したように、そんな段階で大学名に基づき採否が決まることはありません。「自分の大学はこの企業には縁がない」といった思い込みで道を狭めず、幅広い企業を受けてマッチングを探ってほしいと思います。

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