2018年7月23日(月)

ポスト「モバイル」時代も色あせぬ中国の技術革新

スタートアップ
2016/5/12 6:30
保存
共有
印刷
その他

VentureBeat

 エコノミストは中国をなお発展途上国に分類するかもしれない。だが、われわれIT(情報技術)業界の人間は、中国を新たなアイデアや製品を育む世界最大の場と捉えている。米電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズの幹部は5月第1週に北京で開催されていたモバイルインターネットの国際会議「GMIC」で、中国は同社のEVの世界展開にとって不可欠の存在だと明言した。だが、中国の力の源は消費者市場と労働力供給の規模だけではない。次の技術革新をけん引する原動力でもある。

■VR、ドローン、スマートウオッチ…

GMICでは自律飛行ドローン「ホバーカメラ」のデモを見せた(C)Hover Camera YouTube channel

GMICでは自律飛行ドローン「ホバーカメラ」のデモを見せた(C)Hover Camera YouTube channel

 米調査会社ピュー・リサーチ・センターは昨年、中国のスマートフォン(スマホ)所有率を58%と試算した。もちろん、これを主導しているのは若者(18~34歳のスマホ所有率は85%に上る)だが、中国全体でスマホの普及が「急速に進んでいる」という。何より、モバイル決済は既に中国のライフスタイルを変えつつある。これほど普及すると激しい競争が起きるため、中国はモバイル分野で技術革新を生み、それを輸出する立場になっている。米国の技術を模倣する時代は過ぎ去ったのだ。

 それでも、GMICではスマホが間もなく時代遅れになる兆しがみられた。台湾のスマホ大手、宏達国際電子(HTC)の仮想現実(VR)部門で中国代表を務めるアルビン・ワン氏は、来場者を「ポストモバイル時代」に迎え入れた。なぜそうなったのだろうか。

 ワン氏は「2016年は仮想元年で、革命は始まっている」と述べた上で「VR端末は最先端のゲーム機にすぎないとの考え方もある。だが実際には、ゲーム以外にも広範な市場がある」と指摘。VRが娯楽から教育に至る様々な分野でどう活用されるかについて説明した。

 一方、中国のスマホ大手、小米(シャオミ)は小型無人機(ドローン)やスマートウオッチの販売に乗り出す方針を発表。スマートホーム向け家電はGMICの展示フロアの至る所でみられた。もっとも、展示品の中で最大のヒットは、人工知能(AI)を搭載した自律飛行のドローン「ホバーカメラ」だろう。ホバーカメラは「究極の自撮りプラットフォーム」と考えられつつあるが、これはこのコンセプトを示す一つの用途にすぎない。将来的には、どんな使い方も可能だ。

■スマホは新時代のステップ

 ドローンやWi-Fiに接続できる端末、AI、VRをひとくくりにして考えると、かつてはモバイル技術の「聖杯(究極の目標)」だったスマホが、実は何でもネットに接続され、没入型の環境が完備された未来への足がかりにすぎないというワン氏の指摘を理解し始めることができる。今から20年後には、仮想博物館を訪れるとAIのツアーガイドが子どもたちに「iPhone」などの古い技術について解説してくれるようになるかもしれない。

 一方、ごく近い将来に目を向けると、中国は既にモバイル技術の開発で大きな役割を担いつつあり、この傾向がM&A(合併・買収)で一段と強まるのは明らかだ。そう言い切れる一因は中国に折り紙つきの実力があり、技術革新をけん引する意志があるからだ。だが、M&Aは中国以外のIT企業にとっても意味がある。つまり、IT製品では規模がモノをいい、そして中国は他国にはない規模を誇る。中国はいわゆる発展途上国であるため、経済がなお大きく発展しつつある点も重要だ。さらに、固定電話などの時代遅れの技術を一足飛びできるため、中国人技術者はのみ込みが速い。

 欧米企業は技術のリーダーとしての中国の台頭をあるがままに――大きなチャンスとして――受け止めるべきだ。もちろん、そこに至るまでには文化や規制の障害があるだろう。だが大事なのは、技術の発展はもはや中心地限定ではなく、協力による技術革新を阻止する壁は急速に崩れつつあるという点だ。

By Hagai Tal(米モバイルマーケティング会社タプティカの最高経営責任者)

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報