勝利のメンタリティー(山本昌邦)

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Jリーグ指導者に新しい波 清新なエネルギー発散

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2016/5/11 6:30
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下平監督はストッパーからサイドバックに鎌田を適宜スライドさせることで「後ろのことは鎌田に任せ、前に残ってどんどん勝負しろ」というメッセージを伊東に伝えられた。1列前の中盤の右サイドで使われた伊東は水を得た魚のように鹿島の守備網を食い破り、1得点1アシストと勝利に直結する働きをしたのだった。

4月24日の鹿島戦で伊東(左)のよさを下平監督は生かした=共同

4月24日の鹿島戦で伊東(左)のよさを下平監督は生かした=共同

伊東という選手のデータを見ると、試合中のスプリントとタックルの回数が多い特長がはっきり出ている。スライディングタックルしてボールを奪ったら、そのまま自分でドリブルして持って運ぶような選手だ。そういう伊東の良さを鹿島戦で非常に生かした。

もう一人、柏で中川寛斗というMFが目を引いた。身長は155センチしかないが、「そのタイミングでそこに出すか」という意表を突くスルーパスをペナルティーエリア内に送り込める。伊東が奪ってボールを中川に預けてスプリント、追い越した伊東に中川がリターンパスという逆襲の形が鹿島の堅い守りを再三脅かした。

攻から守、守から攻の切り替えの連続

この試合の柏は3-4-3(4-3-3)の布陣を採用、前線からのプレスもすごかった。ボールを失ったらすぐに取り返す作業に入った。鹿島もそういうチームだから攻守の切り替えは頻繁で、ある意味でピンボールを見ているような落ち着きの無さもあったのだが、攻から守、守から攻の切り替えの連続は欧州先端のサッカーに近いものを感じた。

その激しい応酬の中で、柏の柔軟性や流動性に鹿島が「プレスがうまくはまらない」というような戸惑いをみせたことも非常に興味深かった。鹿島といえば、歴戦の小笠原満男を筆頭にしたたかな選手が多く、相手をうまく丸め込むのにたけていると思っていたら、若くアグレッシブな柏のアクションサッカーに押し切られる格好になったのだ。古豪ともいえる鹿島に対して、若い選手を一歩も引かせずに大胆に戦わせた下平監督のマネジメントには拍手を送るしかなかった。

緊急登板のハンディがあるはずの状況で下平監督が思い切った手を打てたのは、チーム掌握によほど自信があったからだろう。青森県の五戸高校を出た後、柏の前身である日立製作所に入社。実業団の日本リーグを経て、1993年のJリーグ創設とともにプロのサッカー選手に転身した。柏、FC東京でプレーし、引退後は柏の強化部スタッフとしてスカウトやユースチームのコーチ、監督を歴任してきた。柏というクラブの裏も表も知り尽くした、まさに生え抜き。ユースの指導者だった時代に手がけた選手をいま、トップチームで使っているのだから、彼らの性格や長所短所に通じているのは当たり前だろう。コミュニケーションの面でそういう大きなアドバンテージがあるから、外国人監督が失敗した後に引き受けても、うまくチームを正常な軌道に乗せられるのではないだろうか。

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