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曽和利光の就活相談室 「御社が第1志望です」アピールしなくても大丈夫

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第10回は「第1志望アピールは必須にあらず」です。
曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

今年の新卒採用では、リクルーターの活用に力を入れている企業も多いようです。経団連加盟企業も、3月の会社説明会の解禁前からリクルーター経由で学生に接触し、今ごろは「6月に選考が始まったら必ず我が社に来てね」というふうに口説いているころでしょうか。こうしたリクルーターとの面談は実質的な面接ともいわれていますね。そこで「第1志望です、絶対にいきます」などと返事をしないと、選考に響くのではないかといった不安も耳にします。ですが、そんな熱烈アピールが内定の要件になることはほとんどないと思います。

第1志望「群」でよい

私はアドバイスを求められれば、「リクルーターには第1志望『群』だといいなさい」と伝えています。マラソンなら10キロ地点で何人も固まっている先頭集団の一人、というイメージです。第1志望だと訴えないと落とされてしまうと思いますか? そんなことがあるとしても、ごく一部の超人気企業だけでしょう。なぜかというと、志望度が低い学生のほうが優秀な可能性が高いと企業側はみるからです。優秀な学生は引く手あまたなので、個別企業に対する志望度は相対的に下がりますよね。だから志望度を選考の物差しにするのは、実は合理的ではないのです。

主に6月選考開始のルールに従っている企業の話になりますが、そもそもリクルーターを活用する意図は何でしょうか。6月に何人が自社の選考過程に残ってくれるか、最終的に何人の内定者を確保できそうかを把握するのが大きな狙いです。選挙の票読みや票固めの感覚といえます。そこで、例えば「これまで接触した中からは、採用計画の4割ぐらいしか確保できなさそうだ」「残りの6割を確実に採るために、ダイレクトメールをもっと送ろう」といった判断をするわけです。

ならばなおのこと、リクルーターに強くアピールすれば、内定候補者としてカウントしてもらいやすいのではないか。そう期待するのも無理はないかもしれませんが、見落とすべきでないポイントがあります。リクルーター経由なら選考基準が甘くなるといった「優遇」はあり得ないということです。

選考にも「急行」と「各駅停車」

多くの企業は複線型の選考過程を用意しています。どういうことかというと、内定までのスピードが違う2パターンの過程があるわけです。電車の急行と各駅停車に例えればわかりやすいかもしれません。急行は他社との争奪が激しそうな上位校の学生向けで、リクルーターの活用も含めて素早く選考を進め、他社に流れないようにします。内定辞退者も多くでますが、ともかく早めに決着を付けるということです。一方、他社に流れる可能性がそこまで高くないと見込める学生には、各駅停車のようにじっくり選考することになります。

この急行と各駅停車は、スピードは違いますが選考基準は同じです。「急行の学生なら優秀でなくても採用する」なんてことは絶対ありません。リクルーターへのアピールが内定への早道にみえるとしたら、それは選考タイミングが早めだからということが大きいのだと思います。逆に、リクルーターに会えなくても、説明会に参加して選考過程に入ってしまえば一緒です。

 ただ、矛盾したことをいうようですが、特に採否のボーダーラインぎりぎりの学生にとっては、早い者勝ちの部分もあります。例えば優良可の評価を学生につけたとして、それぞれまんべんなく採用していくのですが、初期段階では採用側の意識も人数の確保に向いています。まずは「可」の学生で採用枠が埋まっていくことになりがちなわけです。ある程度埋まると、「ここからは『良』以上に絞ろう」となり、選考のハードル自体が高くなります。その意味では、やはり選考が早く進む急行のほうが有利なのかもしれません。

急行と各駅停車の差は自力で縮めることもできます。面接日程を選べるなら、できるだけ早い日程にしましょう。早く受けるべきか、後がいいかと質問されることもありますが、準備を整えてからなどといわず、絶対に早いほうがいいですね。面接日程の電話連絡で、上位校の学生に「明日来てください」、それ以外の学生には「来週来てください」なんて伝える企業も少なくないのですが、そこで「来週に」といわれても、早めてもらえないか交渉する余地はあります。

「他社で内定を得ていて回答を迫られています」などと、自分の就活のスケジュールを伝えれば、配慮してもらえる可能性はあると思います。企業側としても、優秀な学生を採用できるチャンスは逃したくないですからね。いわば各駅停車から急行に乗り換えるようなものです。乗り換えられなくとも、改札に近い車両に乗るぐらいのプラスアルファにはつながるのではないでしょうか。

「他社の選考まで待って」も正直に

内定への回答を迫られたときも、「まだ○○社の選考が残っているので、それが決着してからでないと決められません」と正直に伝えたほうがよいでしょう。「それならうちでは採りません」となるリスクはあります。それは自分が採否のボーダーライン上にいるからです。つまりはその会社とぴったりマッチングした人材だと評価されていないわけで、入社しても活躍できるかどうか不安が残りますよね。就職は人生のゴールではありませんし、変にごまかさないほうがよいと思います。

ちなみに就活の状況を正直に話すべきなのは、面接の場でも同じです。次の面接日程で配慮してもらえるケースもありますし、採否の判断にも影響するかもしれませんよね。「××社でも△△社でも受かっており、急いでいます」などと伝えれば、採用側も「うちもしっかり判断しないといけないな」という思いが強まるというものです。連戦連敗みたいな話まで真っ正直にいう必要はないと思います。嘘はいけないが包み隠さず伝える必要もない、という姿勢が適切でしょう。

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