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資金力より人間の力 レスター優勝が問うたもの
サッカージャーナリスト 大住良之

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2016/5/6 6:30
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2015~16年シーズンのイングランド・プレミアリーグでのレスターの優勝は「21世紀の奇跡」と言ってよい。

昨季は14位でぎりぎりの残留。年間収益はビッグ5と呼ばれるクラブの4分の1から3分の1程度。開幕直前に監督が交代し、シーズン前にブックメーカーが出した掛け率は5000対1――。このようなことは優勝後の報道でよく知られている。

初優勝から一夜明け、サポーターに囲まれ笑顔を見せる岡崎(左から2人目)=共同

初優勝から一夜明け、サポーターに囲まれ笑顔を見せる岡崎(左から2人目)=共同

それまでの「イングランド・リーグ1部」が1992~93年シーズンに大幅に改組されて誕生したプレミアリーグ。過去23シーズンの王座の大半はビッグクラブに支配され(マンチェスター・ユナイテッド13回、チェルシー4回、アーセナル3回、マンチェスター・シティ2回)、それ以外のクラブの優勝は1994~95年シーズンのブラックバーン・ローバーズただひとつだった。だが「持てる者」と「持たざる者」の格差が拡大する一方の21世紀のプレミアリーグでのレスターの優勝は、まさに歴史的なものだ。

本サイトのコラム「ピッチの風」では、日本経済新聞運動部編集委員の武智幸徳さんがバーディー、マレズ、岡崎慎司の攻撃トリオについて言及したが、私はこの「奇跡」を生みだしたチームとしての戦い方について掘り下げてみたい。

今季のレスターで最初に目を引いたのは「苦労人FW」バーディーの驚異的な突破力だった。ハイペースで得点を量産し、シーズン半ばまで得点王争いを独走したバーディーに引っぱられるように、レスターは昨年11月下旬に首位に立った。

この時点になっても、レスターが並み居るビッグクラブを差し置いて優勝してしまうなどと考える人はほとんどいなかっただろう。

だが今年3月、バーディーの得点力が落ちても、レスターは勝ち続けた。日替わりヒーローのように何人もの選手が得点を記録し、接戦を制しながら首位を守った。

ピンチの連続でもパニックにならず

こうした戦いを見ながら私がレスターに強い感銘を覚えたのは、劣勢に立たされ、あるときには「袋だたき」のようにピンチの連続になっても、レスターは決して「パニック」にならないということだった。

圧倒的な個人技でゴールに迫られ、決定的なピンチと見えた瞬間、必ずといっていいほど誰かが体を張り、シュートをブロックしているのだ。「ブロック王」はジャマイカ人のDFモーガンだが、彼とコンビを組むドイツ人DFフートも負けずにシュートブロックが多い。

思い起こしたのは、サンフレッチェ広島だった。今季はやや調子が悪いが、昨年の国際サッカー連盟(FIFA)クラブワールドカップでは南米王者のリバープレートをあと一歩のところまで追い詰め、3位決定戦でアジア王者の広州恒大(中国)を下すなどセンセーションとなった。その守備の特徴がまさに「ブロック率の高さ」だったのだ。

両チームに共通するのは、選手たちがどんな状況になってもパニックに陥らず、それぞれに自分がなすべきことを理解し、足を止めずに忠実に実行していることだ。それを10人のフィールドプレーヤー全員が90分間やり抜くのだから、「結果」が出るのは当然だ。

守備の破綻というのは、相手の個人技やパスワークでつくり出されるのではない。守備側の選手がそうしたものに一瞬気を取られ、マークを見失ったり、占めるべきポジションにつくのが遅れたりしたとき、すなわち「パニック」に陥ったときに、守備の組織が崩れるのだ。

広島とレスターには、ほとんどこうした瞬間がない。それが第一のポイントである。

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