一枚上手の相撲論(浅香山博之)

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技もパワーも観客魅了 力士は個性で土俵沸かそう

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2016/5/6 6:30
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8日に初日を迎える大相撲夏場所(東京・両国国技館)で、学生(関学大)時代から「居反り」などの奇手を繰り出すことで話題だった宇良が新十両に昇進した。体重127キロの小兵には、相撲が単なる力比べではないことを見せてほしい。一方で、力と力のぶつかり合いもまた大相撲の魅力だ。宇良の十両昇進を機に、大相撲の土俵を彩る力士のパワーと技について考えた。

腕力だけなら栃ノ心が一番か

新十両昇進を決め、ポーズをとる宇良=共同

新十両昇進を決め、ポーズをとる宇良=共同

現役力士の中で腕力だけなら栃ノ心が一番強いと思う。まわしを取って引き付けると、巨漢力士でも体が浮き上がってしまうほどだ。寄られたときも相手を引き付け、上半身の力だけで踏ん張ろうとしている。それだけ腕力に自信があるのだろう。

もっとも、上半身を中心に相撲を取るのはいいこととはいえない。栃ノ心の場合、下半身も決して弱くはないように見えるので、もっと足を使って相撲を取ればより上半身の力が生きてくる。膝に故障を抱えるため、どれほど鍛えることができるのかは分からないが、四股やすり足などで下半身をもっと強化すれば、成長の余地がまだまだ残っているようにみえる。

栃ノ心の次にパワーがあるのは照ノ富士だろう。単純な腕力勝負なら栃ノ心に分がありそうだが、照ノ富士の場合は自分より小さく素早い相手にもしっかりとついていける足がある。体が大きいのに小兵が相手でも動き負けない。だから、上半身の強さを相撲につなげることができている。

ただ、照ノ富士も時々、上半身のパワーに頼った強引な相撲をみせることがある。寄られると反り返るような姿勢のまま無理な投げを打ってしのごうとする。あれは見ていて危なっかしい。

押されたり下がったりしながら投げると、自分の体重だけではなく相手の体重まで片足にかかってしまう。さらに、投げというのは体をひねる動作だ。ひねった片足に力士2人分の体重が加われば、当然、大きなケガにつながる。実際、照ノ富士が昨年秋場所の稀勢の里戦で負った膝のケガは、まさにそういう強引な投げが招いたものだった。

春場所で琴奨菊(右)に寄り切られた栃ノ心。もっと足を使って相撲を取れば上半身の力も生きる=共同

春場所で琴奨菊(右)に寄り切られた栃ノ心。もっと足を使って相撲を取れば上半身の力も生きる=共同

強すぎる腕力はもろ刃の剣

強すぎる腕力はもろ刃の剣だ。私もパワー頼みの相撲で何度も痛い目に遭ってきた。1997年夏場所の貴ノ浪戦で下がりながら投げを打ったとき、バリバリという音がして股関節の筋が裂けてしまった。2002年九州場所の土佐ノ海戦でも力任せに投げようとしたところで上腕二頭筋がポンとはじけて、肉離れを起こした。人に「パワーが強すぎて、体が耐えられないのだろう」といわれたこともある。

投げ技で多くの対戦相手にケガをさせてしまったのも苦い思い出だ。小手投げを打った瞬間に相手の腕がバキバキと音をたて、靱帯などが切れている感触が自分の腕にも伝わってきたことがあった。勝負の世界なので仕方がないとはいえ、相手に大ケガをさせてしまうたびに「またやってしまった」と落ち込んだ。自分が壊れるのもさることながら、相手を壊してしまうことが何よりもつらかった。

現役時代は「魁皇=怪力」のイメージが定着していたが、実は上半身だけを重点的に鍛えたことはない。入門後は四股とすり足の稽古が中心だった。テッポウをしたり、申し合いで相手のまわしを引き付けたり、ぶつかり稽古をしたりしているうちに、自然に上半身も鍛えられていく。大相撲の稽古場というのは、そこで必死に取り組んでいるうちにとんでもない力が付く場所なのだ。

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