一足早い母の日、アジサイが彩る 販売方法も広がり

母の日を控え、生花店やスーパーの店頭にはプレゼント用の色とりどりの花が並ぶ。今年の母の日は例年より一足早い5月8日。定番は赤やピンクのカーネーションだが、いつもと同じでは物足りない。そんな需要に応えた新しい商品が増えている。
母の日の贈り物といえば切り花のアレンジメントが主流だが、日持ちの良さから鉢物も人気がある。近年、その鉢物の売れ筋に変化が起きている。花き卸大手の豊明花き(愛知県豊明市)によると「アジサイの取扱金額が昨年ごろからカーネーションを上回り始めた」

人気のけん引役は続々登場する新品種。「万華鏡」「ダンスパーティー」などが代表格だ。「万華鏡」は花の全国コンテストで受賞した島根県のオリジナル品種で、青い花弁を彩る白い縁取りが特徴だ。花弁が細長い「ダンスパーティー」はシャープな印象で人気を集める。日比谷花壇(東京・港)では、昨年の母の日向けアジサイの注文数が一昨年に比べ3割増えたという。
アジサイはカーネーションと違い、うまく育てれば翌年も花をつける。園芸好きのお母さんにはぴったりだ。新品種の販売価格は通常のアジサイやカーネーションの1.5~2倍になることもあり、取扱金額の伸びにつながっている。
実は、アジサイが業界で歓迎される理由は他にもある。カーネーションは母の日を過ぎると需要が急減するが、アジサイは6月まで通常用途の需要が続く。販売機会のロスが出にくく、農家や流通業者にとって扱いやすいのだ。
定番のカーネーションにも新品種や新しい売り方が登場している。たとえばサントリーフラワーズ(東京・港)が販売する青いカーネーション「ムーンダスト」。青いバラを世界で初めて開発した同社が、青い花から採取した遺伝子をカーネーションに組み込んだ。
色味の新しさに加え、気候の安定した南米で栽培しており、安定した品質が強みになっている。「今年は小売店からの新規注文が増えている」(同社国内事業部の滝沢晶氏)という。単価も一般的な赤やピンクより高めで推移している。

飾りやすさに工夫を凝らしたのが日比谷花壇だ。3日、同社のカジュアル型店舗「Hibiya-Kadan Style」で、手入れの簡単なカーネーションのブーケを発売した。特殊なゼリーに水を含ませており、ラッピングした状態のまま飾ることができる。
日用品やスイーツとのセット商品も増えている。パーク・コーポレーション(東京・港)が展開する「青山フラワーマーケット」では「オリジナルのフレグランスやハンドクリームとのセット商品が人気」という。アマゾンジャパン(東京・目黒)は今年から自社で仕入れたカーネーションを新たに扱っている。消費者にとって購入の選択肢が広がっている。

もちろん、赤やピンクのカーネーションにも根強い人気はある。「生花店各社のカタログを見ていると、赤やピンクのカーネーションなど定番が復権している」(大田花き花の生活研究所=東京・大田)といったように、切り花では不動の首位を固めている。
日比谷花壇が今年2~3月にインターネット上で実施したアンケートによると、母の日のプレゼントにかける予算は「5000円未満」が7割近くを占めていた。だが実際に予約が始まってみると「単価は上昇している」(横井理恵広報室室長)という。懐具合は厳しいけれど、せめて母親には日ごろの感謝をきちんと伝えたい。消費者のそんな思いが単価に表れているのだろうか。
(商品部 龍元秀明)
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