日銀、覚悟の「ゼロ回答」 - 日本経済新聞
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日銀、覚悟の「ゼロ回答」

今回ほど日銀金融政策決定会合が世界の市場で注目されたことは極めて珍しい。

欧州中央銀行(ECB)理事会は追加緩和に動かず。米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げに動かず。そこで、三番手の日銀の決断が注目されたわけだ。ニューヨークのヘッジファンドも、追加緩和前提で、その政策内容について、様々なシナリオを設定していた。

しかし、結果は、日銀も「動かず」。

円急騰・株急落を覚悟のうえでの決断といえる。まずは効果実現に時間がかかるマイナス金利の成り行きを見守る姿勢のようだ。だが、市場は焦(じ)れる。

マイナス金利導入で、円相場が円高に逆噴射した苦い体験が、日銀に自制を促した面もあろう。物価予測を引き下げ、物価目標達成への過程を更なる長期戦と不可避と見て、追加的切り札は少しでも温存しておきたい、との思惑も透ける。

市場では、金融政策の限界が強く意識されそうだ。財政政策とのポリシーミックスが今後の注目点となろう。

円と日本株の当面の方向性はほぼ決まった。円は1ドル=105円、日経平均株価は1万6000円までの展開が視野に入る。特に、日本の大型連休中に、欧米市場で円買いトレードが加速する可能性がある。

欧米ヘッジファンドは、日銀金融政策決定会合前に、膨張した円買いポジションの売り戻しに動いていた。しかし、ここから円買い再開、あるいは追加的円買いに動くことになろう。日本株離れも進行しそうだ。

今回の日銀決定で、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の本音は、安堵しているのではあるまいか。ドル高がアップルなどの企業業績に悪影響を与えているなかで、FRBが利上げせずとも日銀の追加緩和が見送られたことによりドル安の市場環境が固まったからだ。

なお、ドル安進行で、原油価格には更なる上昇圧力がかかりそうだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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