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ルノワール展

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「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」が1位 人気投票結果
2位は「ピアノを弾く少女たち」、3位「都会のダンス」

2016/4/29 3:30
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 電子版で実施した「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」(日本経済新聞社など主催、8月22日まで)の出品作に関する人気投票では、「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」に全投票数の6割以上が集中しました。今回が初来日となる作品で、期待の高さをあらわす結果となっています。

   1位「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」(得票率 61.6%)
   2位「ピアノを弾く少女たち」(30.1%)
   3位「都会のダンス」(21.2%)
   4位「草原の坂道」(19.5%)
   5位「陽光のなかの裸婦」(18.2%)
   6位「田舎のダンス」(15.6%)
   7位「アルジャントゥイユのセーヌ川」(15.2%)
   8位「読書する少女」(13.9%)
   9位「大きな裸婦」(11.3%)
 10位「ぶらんこ」(8.6%)

 出品されている80点あまりのルノワール作品から、本紙記者がおすすめの20点をリストアップ。このうち、実際に見たい作品の投票を受け付けました(複数回答可、1人3作品まで)。回答期間は3月31日から4月26日までの約1カ月間でした。

 1位の「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」は初期の傑作で、印象派の技法を用いて描かれています。上位5作品のうち、4位、5位を含めた3作品が同じ頃に描かれており、印象派の根強い人気がわかります。2位の「ピアノを弾く少女たち」は日本人におなじみの作品で、「再会できるのも楽しみ」(59歳女性)という声があがりました。そろっての来日は45年ぶりとなる「都会のダンス」「田舎のダンス」は、それぞれ3位と6位にランクインしました。

 4位の「草原の坂道」は初期の風景画です。「風と匂いを感じさせる」(55歳女性)、「ルノワールの描く空気が好きです。描かれた人物や風景のある空間に、なぜか透明な空気を一緒に塗り込んでいるように見えるから」(49歳男性)など、素早い筆致でとらえた大気の動きに魅力を感じるという意見が相次ぎました。人物画家のイメージが強いルノワールですが、風景画の人気も高く、画家のさまざまな魅力に触れたいという意向がうかがえます。

 

■上位5作品、筆遣いに注目

 パリに住む若者たちが、戸外でダンスやおしゃべりを楽しんでいる。日曜の午後の幸せな情景を、まるでスナップ写真のようにとらえたのが1位の「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」だ。

 絵の舞台はパリ・モンマルトルの安酒場。ムーラン(風車)が目印の人気店だった。当時のモンマルトルはパリ市に編入されたばかりで家賃が安く、労働者や画学生らが住みついていた。ルノワールもここに住み、カンバスを担いで店に通ったという。

 大きな画面に数え切れないほどの人がいるが、大ざっぱに3つに分けられる。手前のテーブルを囲む5人の男女は、ほぼ等身大。その奥でダンスのステップを踏むカップルたちは中くらいの大きさ。さらに後方に小さく描かれた群衆がひしめいている。やや大げさに人物の大きさを変えることで生まれた奥行きが、ダンスホールのにぎわいを感じさせるのに一役買っている。

 もう一つ、筆遣いに注目したい。例えば手前にいる2人の女性のネックレスや髪飾りには、細い筆で分厚く絵の具を乗せ、つややかな質感を出している。一方、ドレスは大きな筆でササッと仕上げ、柔らかく軽やかな印象だ。実物を間近で眺めれば、ルノワールがどのように質感の違いや光を表現したのかがよく分かるだろう。

 展覧会場では、音楽や当時のダンスホールの雰囲気を再現した映画の一場面を流している。作品の世界に浸りながら鑑賞できるはずだ。

 

「ピアノを弾く少女たち」
(1892年、油彩、カンバス、116×90センチ、オルセー美術館蔵)(C) RMN-Grand Palais (musee d'Orsay) / Herve Lewandowski / distributed by AMF

「ピアノを弾く少女たち」
(1892年、油彩、カンバス、116×90センチ、オルセー美術館蔵)(C) RMN-Grand Palais (musee d'Orsay) / Herve Lewandowski / distributed by AMF

 ルノワールは音楽を愛し、ピアノを弾く少女のモチーフを好んだ。その代表作が50代で手がけた2位の「ピアノを弾く少女たち」。この作品が国に買い上げられ、画家としての地位は不動のものとなった。国家買い上げに向けて尽力した友人で詩人のマラルメに、感謝のしるしとして肖像画をプレゼントしたという。

 制作に並々ならぬ情熱を傾けたルノワールは、同じ画題、同じサイズで5つの油絵を仕上げた。その中から選ばれたのが今作というわけだ。19世紀のブルジョワ家庭でピアノは女性のたしなみとされた。全体が白やピンクなどの淡い色合いで統一されていて、裕福な家の娘たちのおっとりとした雰囲気が、あますところなく表されている。

 

「都会のダンス」
(1883年、油彩、カンバス、179.7センチ×89.1センチ、オルセー美術館蔵)(C)RMN-Grand Palais (musee d'Orsay) / Herve Lewandowski / distributed by AMF

「都会のダンス」
(1883年、油彩、カンバス、179.7センチ×89.1センチ、オルセー美術館蔵)(C)RMN-Grand Palais (musee d'Orsay) / Herve Lewandowski / distributed by AMF

 40代にさしかかったころ、ルノワールはスランプを迎えた。印象派の技法に行き詰まってしまったのだ。危機を脱するために海外旅行に出かけ、アルジェリアの強い光や、イタリアのフレスコ画に触発された。帰国後にすぐに制作にとりかかったのが3位の「都会のダンス」である。

 女性の肌は陶器のようになめらか。絹のドレスの光沢感もリアルに表現されている。チョンチョンと素早い筆遣いで描く印象派の技法から脱して、古典的な手法で描いていることがわかる。

 

「草原の坂道」
(1875年ごろ、油彩、カンバス、60×74センチ、オルセー美術館蔵)(C) Musee d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

「草原の坂道」
(1875年ごろ、油彩、カンバス、60×74センチ、オルセー美術館蔵)(C) Musee d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF

 赤い裏地の日傘を差した母と、麦わら帽子をかぶった子どもが、広々とした草原の中を歩いている。4位の「草原の坂道」は、ルノワールによる風景画の代表作だ。風にゆれる木々の葉、赤い花をつけるひなげし、不安定な空模様が、素早い筆致で描かれている。

 30代半ばのルノワールは、親友の画家、モネと印象派の画風を追究していた。セーヌ川沿いのアルジャントゥイユにあるモネの家をしょっちゅう訪ねては、戸外でキャンバスを並べて制作に励んだという。モネも今作によく似た画題で作品を手がけており、2人の友情がうかがえる。

 

 1870年代、新しい芸術を求めていた若い画家たちは、協力して独自の絵画展を開いた。のちに「印象派展」と呼ばれるもので、ルノワールのほか、モネやセザンヌらが参加した。

 「陽光のなかの裸婦」は第2回印象派展に出品したもの。木々の間にたたずむ裸婦に、木漏れ日が降り注いでいる。じっくりと眺めると、目元や首の下の影になった部分は紫や青で、光が当たっている部分は白の絵の具を置いているのがわかる。背景の木々も荒々しいタッチで描かれており、画面全体からみずみずしさ、生命力が漂ってくる。

 表面を滑らかに仕上げる伝統的な絵画とは全く違う表現で、批評家からは腐乱死体のようともいわれた。新しい時代の到来を告げるエネルギーに満ちた1枚だ。

◇  ◇  ◇

 上位の5点には、ルノワールが印象派の技法を見つけ、追究し、そこから脱するまでの試行錯誤の軌跡が表れている。実物を見比べれば、その変化がよくわかるだろう。

(佐々木宇蘭)

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