日本一パワフルな滝! 圧巻、雪解けの立山へ
癒やしと発見の「滝ガール旅」

「落差日本一の滝」って、どこだかご存じでしょうか? 答えは富山県立山の称名滝(しょうみょうだき)です。立山連峰の水を集めて一気に流れ落ちるその落差はなんと350m! 先月こちらで紹介した和歌山県の那智の滝の落差133mは、1段の滝としては日本一とされていますが、称名滝は4段に折れながら落ちる「段瀑(だんばく)」のタイプです(1段目が70m、2段目が58m、3段目が96m、4段目が126m)。
日本一の大瀑布(ばくふ)の迫力を体感するとしたら、お薦めしたい季節はまさに今。5月から6月にかけて、立山の雪解け水が大量に発生するこの時期こそ最もパワフルな「特別な光景」に出合えるからです。
北陸新幹線の開通で便利になった富山へのアクセス。称名滝へは立山駅から直通の称名滝探勝バスで20分ほどです(※ちなみに冬期はこの道路が閉鎖になるため、実際に滝が見られる期間は4月下旬から11月上旬まで。夜間もゲートが閉まりますのでご注意を)。

途中、車窓からは「悪城の壁」(あくしろのかべ)という景勝地も眺めることができます。

高さ500m、長さ2000mに及ぶ断崖。立山のスケールをまずはここからも実感できます。
バスの終点の停留所から滝までは、整備された遊歩道を30分ほど歩きます。最後のほうになると「雨かな……?」と、顔にポツポツと水滴が当たるようになりますが、実はこれ、雨ではなくて、まだ見ぬ滝の水しぶきなのでした。どれだけ大きな滝なのだろう、と胸を踊らせながらしばらく進むと、ドドド……という轟音(ごうおん)と共に、ついに滝が姿を現します。

そう、この時期だけの「特別な光景」とは、こうしてV字の滝になっていること! 写真は2015年6月6日に訪れたときのものです。向かって左側が称名滝ですが、雪解けで水量が増しているために右側にもう一つ滝が現れています。
右側の滝は「ハンノキ滝」と呼ばれており、滝の落ち口は称名滝よりもさらに高く、なんと落差は約500mにも及びます。落差500mというともちろん日本一なのですが、年中見ることができないために「幻の日本一」の滝とされています。

2つの滝は同じ滝つぼに注いでいるので、谷の周囲には豪快に水しぶきが乱舞しています。滝見台にいるだけでもシットリ濡れてきてしまうほどですが、それもまた気持ちいい。雪解け水のミストをたっぷり浴びて、心も洗い流されるようです(濡れたくない場合はレインコートや傘があるといいでしょう)。
日本の滝の魅力のひとつは、四季折々に違う表情を見せてくれるということ。季節の花や紅葉、あるいは雪景色……滝を彩る周囲の風景によって、滝の印象も驚くほど異なってきます。特に称名滝は劇的に変化する滝といえるかもしれません。
ちなみに、11月初めに訪れた称名滝は、こんな感じでした。

水量は6月と比べるとかなり少ないですが、豪快というよりは、気高い雰囲気になっています。何といっても紅葉とのセットが美しい。滝の落差が大きいため、滝の上部は雪化粧になっているのもこの滝ならではの光景といえるでしょう。こうして季節ごとに見比べてみるのも面白いですよ。
立山黒部アルペンルートで、さらにスケールを体感
さて、壮大な滝を体感した後は、その滝がどこから生まれているのかを見にいってみましょう。富山県側の立山駅から長野県側の信濃大町扇沢駅までを結ぶ大人気の山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」で、称名滝のさらに上へ向かいます。
ケーブルカーや高原バス、ロープウェイやトロリーバスなど、ユニークな乗り物を乗り継いでいく立山黒部アルペンルート。冬期閉鎖を終えて、今年も4月16日から全線開通しています。
ルート中に見どころはいくつもありますが、6月ごろまでは標高2450mの室堂平にある「雪の大谷」が見られます。

写真は昨年6月に訪れたときのもの。巨大な雪の壁を見上げて思わず歓声を上げました。壁の高さはピークでは10m以上。これだけの雪が降っていたのだと分かれば、称名滝のあの圧倒的な水量にも納得してしまいます。
滝とはまた趣が異なりますが、碧色(へきしょく)の水をたたえる黒部ダムも、必見です(観光放水は6月26日からの10月15日までの予定です)。

立山黒部アルペンルートの名物グルメは…
立山黒部アルペンルートの道中では、ご当地の美食に数多く出会えるのもうれしいポイント。黒部ダムカレーや、富山名産の白えび丼など、ランチタイムは迷ってしまうかもしれませんね。

立山の名瀑を見た後なので、立山の湧き水を使ったお酒を味わうのも一興でしょうか。
日本酒「にごり酒 大観峰」は、立山黒部アルペンルート大観峰駅売店での限定販売。立山の湧き水で仕込まれた素朴な口当たりのお酒。売店窓口では、ちゃっかり試飲もできます。

お土産にお薦めです。立山の大自然が育んだ水で仕込まれたお酒を飲みながら、日本一の滝の思い出に浸るのもいいかもしれませんね。

編集者、ライター。2015年まで日経BP社に在籍。学生時代から10年以上、趣味の滝めぐりで日本全国を行脚。2013年に自身の滝活動の情報発信サイト「takigirl.net」を開設。日本の滝のポテンシャル、楽しみ方をウェブサイトや雑誌で情報発信するほか、都会で暮らす女性向けに滝めぐりのレクチャーや滝yogaイベントを開催している。 http://takigirl.net/
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