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ごみ減らそう 広がる「減装商品」、企業も本気に

編集委員 宮内禎一

容器包装が少ない商品を推奨してごみを減らす運動を進める神戸大学発のNPO法人ごみじゃぱん(神戸市、代表・石川雅紀神戸大学大学院教授)が発足して9月で8周年を迎える。神戸での限定的な実験から取り組みは近畿、中部地方にも広がり、ダイエーや山崎製パンなど企業も参加する運動に育っている。

のべ約2000点を推奨商品に

ごみじゃぱんは外箱や包みの中のトレーなどの包装が簡易な商品を「減装(へらそう)商品」に選定。スーパーなどの協力を得て、商品棚にポップ広告を掲示して買い物客に購入を勧めている。ごみの減量へ、捨てる時ではなく購入時からごみ問題を考慮するよう消費者に呼びかける運動だ。

きっかけは自治体、企業、研究者らで構成するごみゼロパートナーシップ会議(現・3R活動推進フォーラム)が2005年にまとめた報告書で立てた仮説。「ごみ問題を知りインセンティブが与えられれば、生活者の消費行動が変わり、ごみが少ない商品選択を行う」。この仮説を実証しようと、石川教授は神戸大学の学生を中心に減装ショッピングを推進するNPOを06年に設立した。

推奨商品の選定には手間をかけている。まずNPOで飲料、調味料、パン、菓子などの食品やシャンプー、洗剤、歯ブラシといった生活雑貨を購入し、中身と容器包装の重さを計測する。商品カテゴリーごとに分類、内容量1グラムあたりの容器や包装の割合を計算して数値が小さい上位3割程度を推奨商品としている。商品が次々と衣替えするので、これまでに推奨商品はのべ約2000点に上る。

店舗での実験は07年にコープこうべの神戸市内の1店舗で1カ月間実施したのが始まり。09~10年にはダイエーやイオンも加わって神戸市内の3店舗で実験を1年間続けた。期間を決めて減装ショッピングを周知するイベントを開き、商品棚に推奨商品を示すカードを掲示した。

08年に神戸市のダイエーなど4店で実施した実験には花王、マンダムなどメーカー7社も参加した。参加企業以外の商品を含む1474品目を減装商品としてPRしたところ、中身が同じ通常商品と比べて食品で8.5%、生活雑貨は14.4%販売個数が伸び、包装ごみ1.18トンの削減につながったという。例えばハウス食品の「ククレカレー」は外箱を無くした実験商品と通常商品の売れ行きが7対3だった。

環境保全へ従業員の士気高まる

その後の実験から、消費者が推奨カテゴリー全体で減装商品を購入すると、重量で家庭ごみの25%、体積で60%を占める容器包装ごみを半減できるとの推計結果を得た。

「消費者が商品を選ぶ際にゴミ問題やリサイクルの費用に気付けば、より簡易な包装を選択することが実証できた」と石川教授は語る。従来、簡易包装は事業者にはコスト削減のメリットがある一方、見た目から販売には不利になるとの指摘があったが、消費者へのPRを工夫すれば解決できるというわけだ。

実験結果を受けてダイエーは11年11月から神戸市内の22店で減装ショッピングを開始し、近畿や中部の70店へ拡大した。ごみじゃぱんが定期的に推奨商品リストをダイエーに提供し、イベント開催やポップ広告作成はダイエーが実施する役割分担ができるようになった。「減装ショッピングに参加することで従業員の環境保全活動への士気も高まった」と同社。ユニーなど、実験に協力する企業も増えている。

山崎製パンは11年から簡易包装にした製品の袋にごみじゃぱんの「減装商品」マークを印刷し始めた。当初はロールパンなど7品目に印刷し、プラスチック包装の削減は半年で約14トンに上った。「販売への効果を測るのは難しいが、包装材のコストは確実に削減できている」(同社)という。「減装商品」マークがあることで買い物客の理解にもつながっている。

消費者の理解を深めるのが難しい

同時に山崎製パン、日本ハム、レンゴー、住友ベークライト、マンダムの5社は「ごみじゃぱん減装研究会」を組織し、マンダムなどはパッケージを減らす実験商品について神戸大学生協でアンケートをするなど包装の簡易化を検討している。

「この8年間にレトルトカレーの包装は主流が箱から袋に、調味料はスタンディングパウチになるなど、企業の簡易包装への認識は着実に深まっている」と石川教授はみる。実際、家庭ゴミの中で容器包装が占める割合は03年度に61.3%だったのが12年度には53.9%に低下している。

企業の理解が進む一方、難しいのは消費者の理解を深めること。簡易包装にしても消費者に選ばれなければ普及しない。このため、ごみじゃぱんや企業研究会は中学校への出張授業など社会へのPR活動も同時に進めている。

今後は運動の一層の拡大を目指す。持続可能な開発に関する教育について議論する「ESDユネスコ世界会議」が11月に名古屋市で開かれるのに合わせ、同市のスーパーで減装ショッピングを展開。海外からの来訪者にもアピールする。

大学のNPOが企業や社会を結ぶユニークな取り組みに直接参加した学生はこれまでに100人を超えた。石川教授は「減装商品を説明するカードを1枚置くだけで、消費者の選択行動は違ってくる。消費者の行動変革へ、企業、NPO、自治体などで共同のプラットフォームをつくるのが今後の課題だ」と語る。

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