ルネサス再生、車大手が主導 日産人脈の呉氏が新社長に

2016/4/16 0:00
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ルネサスエレクトロニクスは15日、日産自動車系部品メーカー、カルソニックカンセイ前社長の呉文精氏(59)を6月に社長兼最高経営責任者(CEO)に迎えると発表した。今回の人事は親会社の官民ファンド、産業革新機構の志賀俊之会長兼CEOが主導。そこには普及が始まった自動運転のカギとなる高機能半導体を支配下に置き続けたい自動車業界の思惑が潜んでいる。

これで日本電産によるルネサス買収は完全に白紙になった――。呉氏の社長就任を聞いたルネサス株主の大手メーカー幹部はつぶやいた。

ルネサスに69%(時価7840億円)を出資する革新機構は2015年9月に株式を一定期間売却できない「ロックアップ」契約が解除されたのを受けて、保有株の売却を検討。国内メーカーを中心に打診し、永守重信会長兼社長が率いる日本電産が名乗りを上げた。

15年末から革新機構と日本電産の交渉は本格化した。これに「待った」をかけたのがルネサス株主にも名を連ねる国内の自動車関連メーカーだ。

「独ボッシュのような巨大な部品メーカーを目指す」と公言する永守氏がルネサスを手中に収めれば「力が強くなりすぎて半導体を安く安定的に買えなくなりかねない」。こうした危機感からトヨタ自動車グループをはじめ株主の自動車各社が結束した。

そして2月、革新機構の志賀会長が日本電産本社のある京都に出向いて正式に断った。志賀氏は日産最高執行責任者(COO)を務めた自動車業界の顔。その志賀氏がルネサス社長に起用したのがカルソニック退社後に永守氏の後継候補として日本電産副社長兼COOを務めた呉氏だ。

呉氏は永守氏と経営方針で溝ができ、わずか2年で日本電産を退社した。その呉氏をトップに据える志賀氏の判断は「日本電産に近寄るなということではないか」(関係者)との声も漏れる。

国内でルネサスを巡る駆け引きが繰り広げられている間、世界では車載向け半導体を巡って国境を越えた大型再編が起こる。15年12月にはオランダのNXPセミコンダクターズが2兆円で米同業大手を買収しルネサスは世界首位を明け渡した。

円高や赤字受注、東日本大震災の後遺症で経営が悪化したルネサスは大規模なリストラを断行。15年3月期、現行体制になった10年以降で初めて最終黒字になった。革新機構や自動車各社から多額の出資を得て財務は一定の基盤がある。だが、最近の円高で不透明感が強まっている。世界で戦うには再編などで圧倒的なシェアを持つ製品群をそろえる必要がある。

革新機構は24年までの時限組織で、いずれはルネサス株を売却する。日本電産は引き続き同社買収を狙っており、再編観測はくすぶり続ける。

ルネサスをうまく利用し続けたい自動車各社、持ち株の高値売却を目指す革新機構、技術流出の懸念から海外メーカーとの再編に慎重な経済産業省。多くの関係者の利害を調整しながら、巨大になる海外メーカーとの競争を勝ち抜くという難しいかじ取りが呉氏に課せられる。

(細川幸太郎、太田順尚)

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