2019年9月22日(日)

厳島神社世界遺産登録20年、宮島「過疎化」に悩む

2016/3/12 6:00
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広島県廿日市市の宮島にある厳島神社が世界文化遺産の指定を受けて20年。同島への観光客が年間400万人を超える一方、島内の人口減少には拍車がかかっている。市は財政難から環境整備のための「入島税」の検討を開始。空き家対策を求める声も広がるなど難問が続出している。

正月三が日は約12万人の参拝客でにぎわった厳島神社(広島県廿日市市)

2015年の来島客は402万5061人(前年比3%増)と2年ぶりに400万人台を回復。世界遺産指定前の1995年の来島客は289万人で、この20年間に113万人(39%)と4割近く伸びている。

これに対し、宮島地域(旧宮島町)の人口は2月現在1697人(前年同月比2%減)。95年の2518人に比べ821人(33%)減少した。宮島町は「平成の大合併」で05年に廿日市市に編入合併。人気の観光地を抱え込んだことで同市は一躍観光都市となったが、来島者は増えても宿泊客は少なく宮島の「経済効果」はいまひとつだ。

市の税収は07年度の169億円をピークに低迷が続き、14年度は156億円に落ち込んだ。一方、高齢化が進み社会保障費は07年度の62億円から14年度は105億円に膨張。このままでは観光都市にふさわしい施設整備ができないとして、同市は昨年、観光客から徴収する法定外目的税「入島税」の検討を始めた。

「市民や観光客の理解を得られる方策を検討してほしい」

昨年11月、法定外目的税導入検討委員会(委員長・川崎信文広島大学教授)の初会合で真野勝弘市長はこうあいさつした。当初は今年度内に報告書をまとめる方針だったが、地元から導入に慎重な意見が出ていることもあり、結論は来年度以降に持ち越しになった。

実は宮島では08年にも「入島税」構想が浮上した。フェリーの運賃に1人100円を上乗せすることが検討されたが、発券システムのコストや来島者減少の懸念などがネックになり、見送られた。今回は不足する観光客用トイレや外国人客向けの案内板などの設置が急務とされており、事情は8年前以上に切迫している。

空き家問題も深刻さを増す。市は宮島の中心部について国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定を目指している。ただ、対象地区にある約600軒のうち、2割強の約130軒が現在空き家。街並み保存に支障が出る可能性が指摘されている。

2月半ば、一般社団法人宮島ネイチャー構想推進協議会(15年8月発足、メンバーは学識経験者ら)が湯崎英彦広島県知事や平田修己同県議会議長宛てに「宮島世界遺産文化センター」の設立などを呼びかける文書を提出した。

全国から訪れる修学旅行生などを対象にした海・山体験学習学校の運営のほか、宮島に関する歴史・自然・環境分野での研究人材育成などを目的にした施設で建設候補地として旧宮島中学校跡地(08年に小学校と統合し小中一貫の宮島学園が発足)を挙げている。

同推進協関係者は「観光客が増え続けてきたことで地元に根拠のない楽観論が広がった。危機感の薄いことが宮島の『過疎化対策』を難しくしている」と指摘している。

(広島支局長 安西巧)

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