5県の外国人宿泊者、昨年65%増 官民で上積み急ぐ
観光庁は29日、2015年に中国5県に宿泊した外国人の数が前年比65.9%増の114万3740人だったと発表した。伸び率は全国(48.1%)より高かった。今後も外国人観光客は増加が続く見通しで、官民で誘致策や受け入れ体制の整備が進んでいる。
広島は69.9%増の73万9010人と数、伸び率とも5県で最も大きかった。宮島(廿日市市)の外国人来島者が21万8千人と6割伸び、原爆ドームなど定番のほか尾道市などでも増えた。
広島市では観光客に加え、学会や展示会などの「MICE(マイス)」の誘致に力を入れる。歴史的建造物などで会議や懇親会などを開く「ユニークベニュー」を充実させる。広島藩主浅野家の庭園「縮景園」のほか、宮島など周辺市町の名所とも連携する。
中国地方全体では全国を上回る伸びだが、地域差は大きい。島根県は3万8670人。前年より38.1%増えたが、全国47都道府県で最も少なかった。県は4月、鳥取県と共同で「山陰DMO(地域観光戦略組織)」を設ける。アジアでプロモーションを進め、19年までに外国人宿泊者数を14年度比80%増の16万人に伸ばすことを目指す。
広島県を訪れる観光客に島根県まで足を延ばしてもらう方策も研究する。16年度予算案に欧米から広島を訪れる個人旅行客の訪日の動向調査の実施を盛り込んだ。
5県で伸び率が4番目の山口県は組織改正でインバウンド(訪日外国人)誘客などを強化する。29日、観光スポーツ文化部を設置する条例改正案を議会に提出した。観光はこれまで商工労働部が担当していた。観光交流人口の拡大が狙いで、議会の議決を経て4月1日付での設置を計画する。
外国人誘客には民間の力も欠かせない。3月末、直島(香川県直島町)などを舞台に瀬戸内国際芸術祭が始まるのを前に、フェリーの発着場があるJR宇野駅(岡山県玉野市)前にホテルが開業する。外国人向け民宿の宇野スロープハウス(同)を運営する上杉幸三マックス氏がゲストハウスを改修し12室のホテル「Uno Port INN」として開業する。カフェを併設し、英語ができる従業員を募集する。
鳥取県は西日本旅客鉄道(JR西日本)と連携し、人気漫画「名探偵コナン」がテーマのミステリートレインを運行する。外国人観光客が対象で、モデルコースは1泊2日で設定されていることから宿泊者者増が期待されている。県は関連予算1700万円を投じる。