ヤマト、沖縄に企業向け物流拠点 稼げぬ宅配便補う

2015/11/18 1:35
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ヤマトホールディングスが企業向け物流で活路を開く。那覇市で18日、企業から預かる高付加価値の小口の荷物をアジア各地にスピード配送する戦略物流拠点「サザンゲート」を稼働させる。インターネット通販の拡大で主力の宅配便は取り扱いが増えているものの、競合する日本郵便の安値攻勢などで収益は伸び悩んでいる。稼ぎの出ない個人向けの苦境を企業向けサービスで支える。

「アジアの主要都市に翌日配送できる立地を生かし、顧客企業に新しい価値を提供したい」。ヤマトの木川真会長は17日の開所式でこう話した。

サザンゲートは沖縄県が整備した物流倉庫を賃借して開設。深夜の離着陸が可能で24時間体制で通関業務ができる那覇空港の「沖縄貨物ハブ」のすぐ近くに立地する。延べ床面積2万6590平方メートルは2013年から賃借している隣接棟(2951平方メートル)のほぼ9倍だ。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に伴う将来の国際物流の拡大をにらみ、隣接棟の使用も継続し、能力を一気に10倍に高める。

ヤマトは香港やシンガポールなどで「国際宅急便」といったサービスを手掛けており、企業向けの利用も徐々に伸びている。企業向けで今後のモデルになるのは13年夏から受注している大手電機メーカーの紙幣処理機の部品の保管・輸送だ。アジアの主要都市が飛行4時間圏内という地理的優位性がある沖縄で約4200種類の修理部品の在庫を管理し、必要な地域に配送している。

新棟には日用品のサンスターや化粧品メーカーのホシケミカルズ(東京・千代田)などが入居。各社は国内への商品供給拠点に加え、アジアへの輸出を視野に入れる。木川会長は「国内の宅急便の会社から企業の物流をアジアに展開する会社になりたい」と語る。

企業向けビジネスの拡大を急ぐ背景には主力の宅配便事業が陥っている「豊作貧乏」がある。ヤマトの15年4~9月期の連結営業利益は前年同期比15%減の180億円。「宅急便」は取扱個数が4%増の8億2100万個となる一方、単価は約585円と1%落ちた。アマゾンジャパン(東京・目黒)など価格交渉力が強い「大口の通販事業者からの荷物の割合が増えた」(芝崎健一常務執行役員)ためだ。

さらに宅配便で急速にシェアを伸ばす日本郵便の存在もある。

宅配便でシェア4割超の首位、ヤマト運輸は14年度、値上げのために取扱個数を落とした。一方の日本郵便はシェアを13.6%と前年度から1.7ポイント高めた。日本郵便は「郵便・物流事業セグメント」で15年4~9月期に463億円の営業赤字を計上した。ヤマトのある幹部は「脱デフレの流れの中でも採算度外視の安値受注をしてくる」と恨み節を漏らす。

ただ、シェアが3割で2位の佐川急便と比較すれば、違う風景も見えてくる。佐川を傘下に持つSGホールディングスの15年4~9月期の連結営業利益は前年同期比41%増の283億円と好調。SGの企業向け物流、つまり「BtoB」の比率は3分の2程度とヤマトの5割より高い。「BtoC」など個人向けの比率が相対的に高いヤマトは日本郵便との消耗戦が収益の足を引っ張る。

ヤマトは羽田空港近くにも約1400億円を投じた国内最大級の物流施設「羽田クロノゲート」を稼働させるなど、大型拠点整備を進めている。物流ネットワークを再構築する「バリュー・ネットワーキング構想」はネット通販などの宅配便での当日配送地域の拡大とともに企業向け物流の強化も柱に据えている。

企業向けではSGのほかにも日本通運や日立物流が大口輸送に強い事業基盤を持つ。小口貨物の国際輸送ではフェデックスやUPSなど米国勢の背中は遠い。「小口でアジア向けという需要を新たにつくり出す」というヤマトの「取り組みはまだ2~3合目」(木川会長)。「変革」「革新」のイメージが強いヤマトも足元は停滞感が強い。企業向けで新天地を切り開けるのか、真価が問われる。(剣持泰宏)

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