スズキ、インドで高級店 シェア5割奪還へ

2015/7/24付
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スズキは23日、インドで2つめの販売系列(チャネル)を8月に導入すると発表した。新系列「ネクサ」は高級車や上級車を売る専売店だ。経済成長に伴い、インドでは付加価値がより高い車を求める消費者が増えている。割安な小型車で市場を切り開いてきたスズキだが、今回は自らの殻を破り、世界の主要国に成長したインドでシェア5割の奪還に挑む。

ニューデリーで23日開いたネクサのお披露目の記者会見。「これまでの30年間、市場の開拓者であった我々は次の30年も挑戦しなければならない」とスズキのインド子会社であるマルチ・スズキの鮎川堅一社長は攻めの姿勢を強調した。狙うのは現在45%の市場シェアの引き上げだ。1990年代には5割の大台を超えていたが、2000年代以降は5割を割り込むことが多かった。

ネクサは今夏にデリーやムンバイなどの都市部で30店舗、17年3月末には200店に増やす計画だ。「今までにない購買体験を顧客に味わってもらう」(鮎川社長)という新店舗には従来のマルチ販売店とはまったく異なる光景が広がる。

試験営業を始めているニューデリー郊外のネクサのモデル店。黒と白でシックにまとめた内装が洗練された雰囲気を醸し出す。営業担当者はそろいのスーツに身を包み、きれいに磨いた展示車を顧客と一緒に見て回る。

商品説明にタブレットを使うなど商談は極力ペーパーレス化し、顧客が煩わしいと感じる書類記入の負担を減らす。購入者ごとに専任の「リレーションシップ・マネジャー」がつき、定期点検などを案内する。店長は「特別と感じてもらえる接客を心がける」と話す。

スズキのインド進出は82年。経済自由化を待たずに未知の市場に飛び込んだ。日本で磨いた軽自動車技術を生かして「アルト」などエンジン排気量800~1000cc級のハッチバック車を100万円以下の低価格で販売し、インド市場で小型車王国をつくり上げた。

だが、足元では多目的スポーツ車(SUV)やセダンがのび、「少しでも良い車」を求める消費者が増えている。この分野で攻勢に出るホンダなどライバルにいかに対抗するか。その答えがネクサだ。第1弾として1600cc級のSUV「S-CROSS」を扱う。ネクサでは販売価格が150万円から200万円に届くような車種を中心に扱っていくとみられる。

販売チャネルの多角化にはリスクも伴う。それぞれに特徴付けした販売系列ごとに異なる車を投入し続ける必要があるからだ。日本でも自動車市場の拡大期には各社が複数チャネルを展開したが、市場が成熟すると弱点が露呈した。

たとえばマツダは80~90年代にトヨタ自動車と同じ5系列に販路を広げたことがあったが、多様な車種を出し続けるための負担に耐えきれず、集約を余儀なくされた。

スズキの「挑戦」はネクサにとどまらない。自動車生産では17年に最大で75万台の生産能力を持つ新工場をグジャラート州で稼働する。20年をめどにしたインド国内の販売台数の目標は200万台。15年3月期と比べ実に7割増となる。

シェア5割は高いハードルだ。世界の主要市場で一時期でもシェア5割を確保できたメーカーは一握りしかない。かつての米国市場での米ゼネラル・モーターズ(GM)、日本市場でのトヨタ自動車などだ。それを維持するのはなお難しい。

GMの現在の米国シェアは2割程度。スズキの鈴木修会長は「インドでは17メーカーがしのぎを削る。10年後にマルチのシェアも2割になっている恐れが80%ある」と話す。シェア引き上げが簡単ではないのはスズキ自身が分かっている。

スズキは6月、鈴木修会長の息子である鈴木俊宏氏が社長に就任した。新体制の発足と機を同じくして、最重要市場のインドを活性化させるネクサという新たな取り組みがスタートする。

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