イノベーター育成、大企業巻き込め 政府プロジェクト始動

2015/6/29付
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 「世界に通用するイノベーターの育成」を掲げる政府プロジェクトが動き出した。IT(情報技術)革命以降、海外では米テスラ・モーターズや中国アリババ集団などが勃興するが、日本発の世界水準の新興企業は数えるほどだ。次世代を担う人材をどう育てるか。政府が着目したのは大企業に身を置く“起業家予備軍”だ。

 19日夜、都内のホールで大勢の人が情報交換にいそしんでいた。電球型センサーを開発するIdein(東京・千代田)取締役の平賀由利亜氏もその一人。手にしていたのはソニー、NTT西日本など大企業の社員ら約30人分の名刺。「製品がどんなサービスに活用できるかヒントを得ようと思う」(平賀氏)

 この日スタートを切ったのは経済産業省の事業「始動 ネクストイノベーター2015」。今春、安倍晋三首相が打ち出した「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」の一環だ。イノベーター育成のほか、中堅中小企業200社の米シリコンバレーへの進出支援、ベンチャーや投資家らを対象にしたイベントの日米開催が柱となる。

 第1弾のイノベーター育成事業では、起業家や大企業で新事業開発に携わる社員らを対象に3カ月間、事業立ち上げのノウハウを指導する。講師は志賀俊之日産自動車副会長や新事業創出のプロ。事業計画が優れていた20~30人は、米シリコンバレーで起業家や投資家らに引き合わせる。

 約370人が応募し、22~60歳の122人が1期生に選抜されたが、約7割が大企業からの参加になる。今回のプロジェクトが従来のベンチャー育成策と大きく異なる点はここだ。「起業家と大企業人材を絡めて育成する取り組みはなかった。知の融合が進めば良い」(経産省の担当者)

 「イノベーションを生むにはひらめきをぶつけ合う場が必要。大企業の人材も巻き込んで同志をつくればインパクトが出る」。プロジェクトの企画・運営を任された投資会社WiLの伊佐山元・最高経営責任者はそう理由を説明する。

 ベンチャー単独よりも、大企業の持つ資金力や特許、優秀で豊富な人材が加わることでイノベーションが生まれる確率が高まるとの発想だ。企業にもメリットは大きい。ある企業の幹部は「ほとんどの大企業がイノベーションを求めているが自前で人材を育てられずにいる」と打ち明ける。

 ただ課題も残る。今回は急ピッチで計画を進めたため申込期間が1カ月しかなく、女性の選抜者も1割程度にとどまる。さらにプロジェクトを支援する元ソニー社長の出井伸之氏は「今回のプロジェクトは大企業へのメッセージになるが、これで十分ということではない」と指摘する。

 プロジェクトを起点にイノベーターを輩出し続けるシステムをいかに構築するか、その解も同時に求められている。

(高城裕太、角田康祐)

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