ギリシャ、詰めの交渉 3つのシナリオ分析

2015/6/24付
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【ベルリン=赤川省吾、アテネ=佐野彰洋】ユーロ圏は22日の首脳会議でギリシャが財政改革に前向きな姿勢をみせたのを受け、同国への資金支援について週内の合意を目指して詰めの交渉に入った。金融市場は好感したが、ギリシャが改革にどこまで本気なのかを疑う声は多い。今後、ギリシャの債務危機はどのようなシナリオが予想されるのか。

■EUと週内合意

「合意が近いとの感触がある」。首脳会議から一夜明けた23日、ギリシャ政府の報道官は地元テレビで語った。

ギリシャはこれまで拒んできた年金の支給開始年齢の引き上げや、付加価値税の増税を盛り込んだ改革案を首脳会議で示した。突然の変わり身の背後には、ユーロ圏から凍結されている72億ユーロ(1兆円)の支援をどうしても引き出さなければならない事情があった。

資金支援が凍結されたままでは6月にも年金支給が滞る。年金受給者は人口の約4分の1にあたる265万人で支給額は毎月20億ユーロ超(3000億円規模)に達する。これが確保できなければ、与党・急進左派連合(SYRIZA)の大票田である年金生活者が離反する恐れがあった。

ギリシャ問題を集中討議する24日のユーロ圏の財務相会合では、この改革案がたたき台になる。改革案の具体的な内容は明らかになっていないが、修正項目が少なければ「遅くとも24日夜までに合意」(トゥスク欧州連合=EU=大統領)し、25~26日のEU首脳会議で了承されることになる。

この場合、EUは72億ユーロの支援再開のほか、銀行の資本増強のために温存していた資金を渡すことを検討する見通し。これにより6月末に予定されている国際通貨基金(IMF)への資金返済も可能になり「6月危機」は回避できる。ユーロ相場の安定が期待できそうだ。

■今夏までに決着

もっとも、EU側は甘くない。ギリシャが示した「改革案」の内容はなお不十分との見方がくすぶる。ドイツのメルケル首相は「集中して作業しないといけない」と語る。

特に心配なのは財政の持続可能性だ。「だからこそ年金制度の改革にこだわっている」と独アリアンツのエコノミスト、ロルフ・シュナイダー氏はみる。ギリシャ政府の閣議決定や議会の承認を条件にすべきだとの声が漏れてくる。

改革案の修正やギリシャ国内での政治手続きに時間がかかれば、交渉期限の先延ばしが考えられる。交渉中のギリシャの破綻を防ぐため、EUが必要最小限の資金を小刻みに支援しながら両者の溝を埋めていくことになる。欧州中央銀行(ECB)への返済期限が来る今夏のうちに改革案で合意できれば、ギリシャの債務不履行(デフォルト)はなんとか避けられる。

■協議決裂

交渉が決裂すれば、ギリシャは6~8月のIMFとECBへの資金の返済ができなくなる。信用不安が深まって銀行からの預金流出が加速し、経済は行き詰まる。

仮に資金支援が再開されてもギリシャの資金繰りは今秋までしか持たず、当座の危機を回避できるにすぎない。先行きの不透明感から内需は冷え込んでいる。行政機構は非効率。増税しても効果的に税収が上がるかは見えない。銀行システムはECBの資金供給で延命しているだけだ。

ギリシャ再生には経済の抜本改革と新しい資金支援策が必要だ。「(そうした)議論はしていない」。22日の首脳会議の出席者は口をそろえた。今回を乗り切っても同じようなドタバタ劇が今後も繰り返される可能性は残る。

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