2018年7月20日(金)

W杯開催地変更も焦点に 肥大FIFA、制御失う

2015/6/12付
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 国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件はワールドカップ(W杯)開催国の誘致に絡む政府や仲介会社、スポーツ企業を巻き込む異例の展開をみせる。メディアなどの企業とともにサッカーを巨大産業に育てたFIFAは、自らの統治をないがしろにしてきた。各国政府や企業は迅速な改革を求めるが、複雑な事件の解明は緒に就いたばかりだ。

 米司法省がFIFA幹部ら14人を贈収賄などの罪で起訴してから2週間、汚職事件は大きな展開をみせている。独誌シュピーゲル(電子版)によると、スイス捜査当局は10日、2018年のロシア、22年のカタールのワールドカップ(W杯)両大会招致の捜査に関連し、ブラッター会長、バルク事務局長の執務室から文書を押収した。

 スイス当局は2日の声明では「ブラッター氏を捜査対象にしていない」と説明していたが、FIFAのトップに捜査の手が近づきつつあることが明らかになった。米メディアは米当局がブラッター氏を捜査対象にしていると伝えており、米・スイス当局が捜査協力を深めそうだ。

 今後の焦点はW杯招致での不正行為が明らかになった際に、開催地が変わる可能性があるかだ。スイス当局はFIFAの財務責任者にすでに接触したとみられる。FIFA監査法令順守委員会のスカラ委員長は地元メディアに「賄賂でW杯を獲得したのなら、取り消しはあり得る」と発言した。

 取り消しに至ればロシアとカタールが猛反発するのは必至だ。ロシアのプーチン大統領は米司法省がFIFA幹部らの起訴を発表した直後の5月28日、「ロシアでW杯を開催させないよう、ブラッター氏に圧力がかかっている」と捜査に強い不快感を表明している。

 一方で英国では閣僚が早くも22年W杯招致の準備があると発言した。汚職事件は国際社会の新たな対立要因になる懸念もはらむ。

 米司法省の起訴状は、FIFA理事らが賄賂を要求する構図を浮き彫りにした。W杯招致の開催地やスポンサー企業に絡む賄賂は複数の仲介者を通して理事らに渡っていた。

 リンチ米司法長官が「20年以上にわたり続いた腐敗を根絶する」と宣言できたのは、FIFA元理事の米国人、チャック・ブレイザー氏が捜査に協力したためだ。ニューヨークの一等地にある豪華マンションに暮らし、飼い猫にも専用の部屋をあてがう羽振りの良さに、米連邦捜査局(FBI)が目を付けていた。

 13年の証言資料によると、同氏は「ほかの幹部と1998年のフランスW杯などに関する賄賂をマーケティング会社などから受け取ることで同意した」という。FIFA会長選を巡る票の買収や90年代にさかのぼる汚職の疑惑も浮上した。米当局はこうした証言を手掛かりに「世界を揺るがす大事件に発展する」との確信に至った。

 捜査の手は国外に伸びる。FIFA幹部の逮捕劇はスイスが舞台で、被告はアルゼンチンなど米国人以外が中心だ。米当局は組織犯罪を取り締まる米国内法のRICO法の適用を視野に入れているもようだ。外国人であっても米国の金融機関や通信回線を使うなど少しでも米国と関わりがあれば捜査対象にする。

 米金融機関には資金洗浄と疑われる取引を当局に報告する義務があり、起訴状にはJPモルガン・チェースなどの米四大銀行が名指しで登場する。焦点は銀行側が資金洗浄(マネーロンダリング)に手を貸したと認識していたかだ。弁護士のロス・デルストン氏は「(FIFAの事件は)米銀のシステムが不十分で、改良が必要だと示した」と指摘する。

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