2019年7月20日(土)

同床異夢の火力統合 東電・中部電が新会社

2015/4/16付
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東京電力と中部電力は15日、火力発電事業の共同出資会社を30日に設立すると発表した。液化天然ガス(LNG)調達量は世界最大級となりコスト削減が期待できるが、焦点の既存発電所の統合は2年後に判断を持ち越した。両社は顧客に電気を届ける小売りではぶつかる。電力自由化時代の協調と競争。提携の成否は今後の業界再編を占う試金石になりそうだ。

「両社の強みを持ち寄り高いゴールをめざす」。都内で開いた記者会見で中部電の水野明久社長はこう口火を切った。

新会社は「JERA(ジェラ)」(東京・中央)。折半出資で、社長に中部電の垣見祐二専務執行役員、会長に東電の内藤義博取締役が就く。

燃料調達や輸送、発電所の新設や建て替え、海外の発電事業などを順次統合していく。LNG調達量は年4千万トンと世界最大の韓国ガス公社に並ぶ。投資負担を分担しながら最新鋭の火力発電設備が手に入る。

福島第1原子力発電所事故の賠償や除染で資金難の東電にはメリットが大きい。火力発電の比率が高い中部電も「燃料調達コストの低減は大きな課題」(水野社長)だった。一見ウィン・ウィンの関係に見える。だが、そう単純ではない。

「2017年春ごろをメドに判断します」。記者会見の空気が変わったのは、説明が既存の火力発電所の扱いに移ったときだ。ここで「同床異夢」が顔を見せた。

両社の火力発電所の出力は計6700万キロワット(原発67基に相当)と国内の半分近くを占める。海外や今後の新設を含めると世界最大級の1億キロワットも視野に入るという。

「サプライチェーン全体の統合が圧倒的な強みになる」(東電の広瀬直己社長)。燃料調達交渉でも、これだけの規模の燃料を消費する設備があってこそインパクトを持つ。「既存火力まで統合しないと提携の意味がない」(東電幹部)

だが中部電の水野社長は「最終形は一体が望ましいが、まず統合の一つ一つの成果を確認していきたい」と慎重だ。なぜか。「火力の効率的な運用や燃料調達手法に磨きをかけてきた。火力は競争力の源泉だ」(中部電幹部)。たやすく東電に渡したくはない。

柏崎刈羽原発の再稼働が見通せない東電は経営再建の行方が不透明なうえに、実質国有化されている。深入りすれば、国の関与が中部電にも及んでくるのではないかとの懸念もある。そのためにあえて、新会社の基本理念に「自律的な事業運営が可能な経営体制を確保する」と入れたほどだ。

既に大口顧客向けで始まっている電力小売りでの競争も、両社の距離を微妙なものにしている。

先に仕掛けたのは中部電だ。13年10月に三菱商事から新電力を買収。東京都庁への電力供給実績などを持つ。東電も昨年10月から子会社を通じて中京地区などで販売を開始。ヤマダ電機の店舗など中部電の有力顧客を奪った。16年4月には利益率が高い家庭向けの販売が自由化される。

火力発電所を統合すれば、両社が東西で電気を売りやすくなる。競争が促進され、消費者は料金低下を期待できる。だが東電、中部電にとっては互いに地元市場を侵食されることを意味する。中部電は東電管内に三菱商事などと火力発電所を建設中。東電に頼らなくても首都圏で売る電気を確保する準備にも見える。

もっとも、つばぜり合いしている余裕はない。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが英BGグループの買収を決め、「巨大企業が誕生するなかで(燃料の)バイヤーも互角に渡り合うための答えを探す必要がある」(垣見氏)

新会社の社名はJAPAN(日本)とERA(時代)を組み合わせた。その名の通り、時代を画すことができるか。これから真価を問われる。(西岡貴司、中川渉、秦野貫)

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