年金改革、社保審で議論開始 女性・高齢者に照準
今年の年金改革に向けた議論が20日始まった。パート社員も手厚い厚生年金に入りやすくするほか、高齢者が今より多くの年金を受け取れるようにすることを検討する。少子化で年金を支える現役世代が減るなか、年金制度を維持するために働く人を増やす。物価の動きにかかわらず自動的に受給額を抑える仕組みも議論する。
厚生労働省が20日の社会保障審議会の年金部会に検討課題を示した。年末まで議論し、2015年の通常国会で関連法の改正を目指す。
女性が働きやすくするための改革の1つは、主婦などパート社員が厚生年金に入りやすくすることだ。非正規で働く人の多くは受給額が少ない国民年金の加入者。16年10月には厚生年金の対象を大企業で週20時間以上働く人まで広げることは決定ずみだが、中小企業も含めて一段と広げることを検討する。
会社員の妻などが保険料を払わなくても国民年金を受け取れる「第3号被保険者制度」の見直しも検討項目に挙げた。女性の就労意欲を抑えているとの指摘があるためだ。ただ第3号制度の対象者は900万人超。厚労省も「正面から取り組むのは政治的に難しい」(幹部)と慎重な姿勢だ。
働く高齢者を増やす制度改革も検討する。原則65歳からの公的年金の受給開始を、75歳まで個人の選択で引き上げられるようにする。受け取り開始は今でも60~70歳の範囲で自由に決められる。早めるほど月々の受給額が減り、遅らせるほど増える。70歳を過ぎても働く高齢者が増えており、選択肢を広げる。
働く高齢者の賃金に応じて年金の受給額が減る「在職老齢年金制度」も見直す。今より年金の支給額が増えるため、財源の確保が課題だ。
年金制度を維持するには働く人を増やすのが大きな課題だ。今は65歳以上の高齢者1人を2.2人の現役世代が支えているが、少子高齢化がさらに進む50年には1.2人で1人を支えることになる。厚労省が6月にまとめた年金財政の見通しでも、女性や高齢者の就労が進まずに経済が停滞すれば、年金の受給額は現役収入の5割を下回る。
年金部会の委員からはこの日、「働く人が増えるのは年金制度を維持する最低条件。支給開始年齢の(一律の)引き上げも議論すべきだ」(小塩隆士一橋大教授)と踏み込んだ改革を求める意見も出た。米英独などはすでに支給開始年齢を67~68歳まで上げると決めたが、平均寿命がより長い日本は65歳にとどまる。
今年の検討項目には、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の見直しも盛り込んだ。理事長が1人で意思決定する仕組みを見直し、運用の専門家を含めた合議制の導入を検討する。