/

大学の知恵、暮らし変える(関西の羅針盤)

第3章 生活産業の明日(6)

タブレット大の白い測定器に指を入れ、目をつぶって1分間。「神経系のバランスが少し崩れています。睡眠障害に結びつくので、音楽やアロマなどリラックス法をお勧めします」と記した仮のリポートが出力された。梅田のグランフロント大阪に昨年オープンした大阪市立大健康科学イノベーションセンター(渡辺恭良所長)では「疲労度測定」を体験できる。

都会人を健康に

測定器は同大学も関わり日立システムズなどが開発した。正式な測定には500円かかるが、会員制の「健康見守り隊」に入れば年4回まで無料。月1回開く健康測定会では内臓脂肪の分析や骨密度測定も受けられる。共同研究企業の新商品をモニターとして試すことも可能で、堀洋副所長は「ビジネスマンらに自己管理の手段としてセンターを活用してほしい」と話す。

センター開設の狙いはそれだけではない。現代人の疲労感やストレスがどのようにがんや生活習慣病、鬱に結びつくのか。大学にとって通常は「健常者」のデータは入手が難しいが、「見守り隊」を通じれば、同意の上でビジネスマンら多様な人の「未病」のデータを集めて追跡もできる。

食品、衣服、住まい、職場環境。健康を取り巻く産業の裾野は広い。2年前に関西経済連合会が産官学医の各団体をメンバーとする「健康科学ビジネス推進機構」を設立するなど、関西では学術研究をビジネスにつなげる素地がある。同センターはこうした蓄積も踏まえ「抗疲労」や「抗加齢」に関わる企業との共同研究を加速させている。

和の味覚追求

「おいしさとは何か」。京都大農学研究科の伏木亨教授は2010年以来、京料理の料理人らと和食の新たな展開を追求している。研究者と料理人、企業関係者で月に1度、研究会を開き、研究室には老舗料亭の若手経営者ら3人が大学院生として在籍する。

脳内の反応を含む「味覚の生理学」を研究してきた同教授が「だし」に注目したのが発端。研究室と食品メーカーの共同研究にも料理人が参加し、今秋には、だしの風味が利いた離乳食が発売される見込みだ。

明治以降、関西では生活関連産業が集積し、大学や研究機関が人材の供給を含めて発展を支えてきた。次なる大学発「暮らしのイノベーション」へ、伝統にさらに磨きをかける時だ。(岡田直子)

=この項おわり

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン