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チーム優先 献身の投球 広島連覇の軌跡(下)

ローテの柱、野村の覚悟

1979、80年と連覇を果たした広島の先発陣の軸は池谷、北別府、山根、福士といったところだった。抑えに江夏が控え、投手の分業制が定着していたとはいえ80年は山根が14完投をマークするなど、まだまだ先発投手にかかる勝敗の比重は大きかった。

野村は「チームが勝てばいい。自分に白星がつくかどうかは関係ない」という=共同

1人で責任を背負いこんでいた昔の先発投手のにおいを、今季、野村が漂わせ始めた。20日現在、9勝5敗。16勝3敗で最多勝に輝いた昨季からすると物足りないが、優勝への貢献度は昨季に勝るとも劣らない。

昨今、すっかり定着した「カード頭(あたま)」という言い方がある。3連戦の1戦目のことで、多くの監督が3連戦を一単位ととらえ、それに勝ち越すことをまずは目指す。当然、カード頭の先発がかぎを握る。

先発の登板間隔が中4日、5日だったその昔、週に3連戦を2度という基本的な日程のなかで、カード頭に固定するローテーションはありえなかった。こうした起用は中6日、週1回の登板が普通となった時代ならではのものといえる。

野村は腰の違和感で1回先発を飛ばしたあとに3度、カード2戦目に回っただけ。今季の24先発中、21回がカード頭の登板だった。勝敗がつかなかった10試合も、チームは7勝2敗1分けと勝ち越しており、24戦中16試合で勝利に導いた。

必然的に相手エースとの対戦が多くなり、勝ち星は増えない。それでも「チームが勝てばいい。自分に白星がつくかどうかは関係ない」と言って、黙々と投げ続けた。

負けない投球の背後にあるのは、相手投手より先に点をやらないという意思。メジャー由来の概念で、先発は6回3失点までなら合格という「クオリティー・スタート(QS)」がある。

投手としては味方が点を取れずに負けたときの救いになる指標だが、野村はそれでよしとはしない。相手投手に投げ負けたら0-1でも負けは負け、という覚悟が投球から伝わってきた。

7月25日、巨人戦の登板も3連戦の初戦だった。好調の相手先発、マイコラスに対し一歩も引かない。0-0で迎えた八回、野村の代打に立った西川らの適時打で決着した。

優勝を決めた9月18日の阪神戦も、6回1失点。連戦ではなく1試合のみ組まれた試合だったが、見事な"カード頭"の仕事っぷりだった。野村に勝ち負けはつかなかったが、そこになんともいえない味があった。

ほぼ1年間、ローテーションを守り続けた頑健さは昨季限りで引退した黒田ら、往年のエースの系譜を継ぐ資質。この右腕に代表されるチームへの100パーセントの献身が、新たな黄金時代の礎になる。

 この連載は篠山正幸が担当しました。

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