2017年11月18日(土)

EU財務相創設を提案

2017/9/14 1:43
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 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は13日、仏ストラスブールの欧州議会で施政方針について演説し、常任のEU財務相や欧州版国際通貨基金(IMF)の創設を提案した。通貨ユーロは「EU全体の単一通貨」だと強調し、ユーロ導入国の拡大を促す考えを表明。英国離脱で結束が揺らぐEUの立て直しに向けて欧州統合の深化を訴えた。

 ユンケル氏がEU結束のための具体策のひとつとして取り上げたのが、ユーロ圏改革の加速だ。欧州委員長の就任前は、ルクセンブルク首相としてユーロ圏財務相会合の議長を務め、ギリシャ危機に対応してきたユンケル氏にとって、単一通貨への思い入れは強い。

 「ユーロはEU全体の単一通貨にならなければならない」。ユンケル氏は演説で強調し、スウェーデン、ポーランドなどユーロを導入していない国へ加盟を促す支援枠組みを創設する考えを示した。EU28加盟国のうち、ユーロ採用は19カ国にとどまっている。

 ユーロを基盤とした通貨統合を「より強力」にするために打ち出したのが、常設のEU財務相の創設だ。ユーロ圏だけではなく、EU全体の経済・財政の監督役を担わせる。一方、独仏などが唱えるユーロ圏の独自予算は「我々には必要ない」と強調。ユーロ圏の統合を優先させるのではなく、EU全体で経済通貨統合を深化させることが重要だとの考えを示した。

 ユーロ圏の財政危機国を支援する常設の基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を、欧州版のIMFとなる欧州通貨基金(EMF)にくら替えする案も表明。12月までに具体案を提示する。ユンケル氏は言及しなかったが、こうした通貨統合のテコ入れ策は、将来的なEUの財政統合に向けた一歩につながるとの見方も根強い。

 さらに「より統合されたEU」を具体的に実現するため、加盟国首脳の代表を担っているEU大統領と、行政機関トップである欧州委員長を一本化することも将来課題として提案した。

 「今はさらに統合された強力な欧州を構築するときだ」。2019年秋の任期満了をもって退任する意向のユンケル氏は、今回の一般教書演説を任期の「総仕上げ」と位置づけた。14年秋の就任以来、ギリシャ危機や難民危機、英国の離脱決定など相次ぐ危機への対応ばかりに追われていたユンケル体制だが、今回はEUの将来像を描くことに力を入れた。

 「欧州は東と西、2つの肺で呼吸する必要がある」。強権的な政治姿勢を強めるハンガリーやポーランドなど東欧諸国との亀裂への対応をみせたのも、今回のユンケル氏の演説の特徴だ。東欧諸国から西欧への出稼ぎ労働者の権利保護を巡っては、EUレベルで労働監督機関を設けることを提案するなど、中東欧側の主張に配慮をみせた。

 ただ言論の自由や司法権の独立などはEUの揺るがない基本的価値だとも強調。難民の受け入れ義務化などを巡って、EUの最高裁にあたるEU司法裁判所の決定に従わない姿勢をにじませるハンガリーなどを念頭に、「EU司法裁の決定に従うかは選択ではなく、義務だ」と迫った。

 今年5月にはフランスで親EUのマクロン大統領が誕生。24日に連邦議会選(下院選)を控えるドイツでも、EUを支えるメルケル首相の再選シナリオが強まっている。年初に警戒が高まった「反EU」を掲げるポピュリズム台頭の機運はひとまず後退。ユンケル氏は「今は絶好の機会だ」と語った。

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