トヨタ、異業種連携急ぐ シンガポール配車大手と協業
トヨタ自動車が異業種との連携を加速させる。30日、シンガポールの配車アプリ大手、グラブとの提携を発表した。通信機能を備えた「コネクテッドカー(つながる車)」で得たデータを使い保険などのサービスを強化する。国内でもベンチャー5社と新サービスの共同開発に乗り出す。ライドシェア(相乗り)の普及など競争環境が大きく変わるなか、外部の経営資源を活用し新たな成長モデルの創造を急ぐ。
トヨタはトヨタファイナンシャルサービス、あいおいニッセイ同和損害保険と組みグラブとの協業を始めた。豊田通商も30日、グラブに出資したと発表。金額は数億円とみられる。グラブの車両に金融や保険などのサービスを提供していく。
グラブは東南アジア7カ国87都市で個人間のライドシェアやタクシー配車サービスなどを手掛ける。登録ドライバーは120万人を超え、東南アジアでは自家用車の配車サービスの約7割のシェアを持つ。
トヨタはグラブが保有するレンタカー車両100台に通信型ドライブレコーダーを提供する。位置情報や運転の状況などのビッグデータを収集し、ドライバーの運転技術などを保険料に反映する新たな保険サービスを展開する方向。高いシェアを持つ東南アジア各国でシェアリングなどのサービスの強化につなげる。
トヨタが異業種との連携を加速するのは「競争相手やルールが大きく変わろうとしている」(豊田章男社長)ことへの危機感があるためだ。
自動運転などの次世代技術ではIT(情報技術)との融合が進み、米グーグルなど異業種の参入も相次ぐ。研究開発費が年間1兆円を超えるトヨタでも資金や人員が足りない状況だ。
米シリコンバレーに設置した人工知能(AI)の開発子会社では優秀な技術者を採用するなど、自前主義にこだわらない姿勢を鮮明にしている。
トヨタは20年までに日米で販売する新車に車載通信機を標準搭載する予定。走行データを異業種の企業にも開放し、自動車の販売だけでなくサービスでも稼げる事業モデルの構築を急いでいる。
金融子会社などを通じて出資するライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズではドライバーの収入をローン返済に充てる仕組みを始めている。
異業種と組んで新たな事業を創出できるかどうかは自動車各社の共通の経営課題となっている。ホンダも昨年、グラブに出資を決めた。米ゼネラル・モーターズはウーバーのライバル、米リフトに出資している。