東芝決算、揺れた半年 新旧監査法人に板挟み

2017/8/11 1:15
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 東芝が10日提出した2017年3月期の有価証券報告書に一部を除き正しいことを示す「限定付き適正」の監査意見がついた。上場廃止懸念はひとまず後退し、綱川智社長は記者会見で「決算が正常化する」と語った。PwCあらた監査法人が東芝の決算に「待った」をかけて約半年。問題が長引いたのは、新旧監査法人に挟まれ身動きが取れなくなったためだ。

記者会見する東芝の綱川社長(10日午後、東京都港区)
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記者会見する東芝の綱川社長(10日午後、東京都港区)

■疑念

 発端は1月中旬。「一部経営陣の不正があるかもしれない」。あらたに情報が届いた。昨年末に元子会社の米原発ウエスチングハウス(WH)で巨額損失が発覚したが、WHの元経営陣が損失を抑えるため部下に圧力をかけた疑いが浮上した。

 「過去にもこうした行為がなかったか」。あらたは疑いだし、東芝に調査を要請した。2月14日に予定していた16年4~12月期決算の発表は「待った」がかかり、1カ月延期に追い込まれた。

 調査では証拠は見つからなかった。だが決算発表日の1週間前になってもあらたからはOKが出ない。東芝は2度目の延期を余儀なくされた。

 争点は東芝が米原発損失をいつ認識したのか。15年末にWHが買収した米原発建設会社で発生。あらたは買収直後に損失を認識できた可能性を指摘した。前任の新日本監査法人が了承した16年3月期まで遡って調査する必要があるとした。

■決裂

 2回目の追加調査でも証拠は出なかった。東芝は新日本から「当時は適正」との見解を取り付けたが、あらたは「巨額損失が突然発覚するのはおかしい」との見方を変えなかった。4月11日、東芝は承認のない「意見不表明」の決算発表に踏み切らざるを得なかった。

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 東芝とあらたの関係は悪化した。あらたは東芝本社からチームごと全員撤収し、東芝側は監査法人を交代する議論を始めた。だが大手では他に残った監査法人はなく、東芝のような大企業を中堅の監査法人が突然担当するのには無理があった。

 その後、両社は歩み寄り、中断していた17年3月期決算の確定作業を本格化。有報の提出期限は8月10日に延期した。

 最後まで攻防は続いた。100人以上を聞き取りし、240万件のメールも調べたが、証拠はなかった。東芝の幹部は「損失を知らなかったことを示す『悪魔の証明』みたいだ」と嘆いた。

■玉虫色

 7月下旬、あらたは「過年度決算の訂正をしなければ適正意見は出せない」と東芝に伝え、「損失の相当程度か全額が16年3月期に計上されるべきだ」との見方を貫いた。「仮に投資家から一連の問題で訴訟を起こされても、監査法人の責任を果たしたと主張できるようにする」。あらた関係者は周囲に語った。

 前任の新日本は「買収時の手続きに問題ない」として過年度訂正に応じない考えを繰り返した。新日本は東芝の会計不祥事を見抜けなかったことで金融庁の行政処分を受けていただけに、相応の覚悟で決算内容を精査したという自負があった。

 東芝、新日本、あらたはそれぞれの立場と意見を示し、いずれも明確な間違いは見当たらなかった。「限定付き適正」の意見は、それぞれの顔を立てるための「玉虫色の結論」ともいえた。

 金融庁は監査品質の向上のために監査法人を定期的に交代する「ローテーション制度」の導入議論を始めた。監査法人の交代はどの会社にもあり得る事態。東芝の監査問題は全ての上場企業に共通する課題でもある。

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