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自治体の子供向けツアー中止相次ぐ 「旅行業法違反」指摘で

過剰反応との声も

夏休みに自治体が主催する子供向けツアーが旅行業法に抵触する恐れがあるとして相次いで中止に追い込まれている。同法は無登録で不特定多数の客を集めることを禁じているが、ツアーは営利目的でなく、専門家からは「過剰反応では」との声も上がる。法解釈に曖昧な部分もあり、観光庁は近く実施可能な具体例を通知する方針だ。

「児童生徒をはじめ、保護者や関係自治体に深くおわびします」。川崎市教育委員会は6月末、市内の小中学生を対象に7月下旬から実施予定だった「ふれあいサマーキャンプ」の開催を急きょ取りやめた。

キャンプ地は北海道や岩手県など5カ所。自然に触れ合い、地域の文化を学ぶ3泊4日のツアーで1990年から行われてきた。約80人の参加者から徴収した参加費は返還し、電話で謝罪した。

中止のきっかけは6月、神奈川県海老名市が主催するバスツアーが市議会で「無登録で不特定多数の参加者を募り、費用を集める行為は旅行業法に触れる恐れがある」と指摘されたためだ。

このことを知った川崎市教委の担当者が県に問い合わせたところ、県は「市内とはいえ、小学生から中学生の募集は特定と言いづらい」と回答。市は登録資格がある旅行業者への委託を検討したが、実施日が迫り、日程変更が困難だったため実施を断念した。

県は6月23日、「県内の自治体が関与するツアーにおいて旅行業法上適切な取り扱いとは言えないものが認められた」として、同法に基づき取り扱うよう求める文書を市区町村に出した。

同県平塚市も7月5日、市内の小学5、6年生向けの静岡県と岩手県での自然体験キャンプの中止を決定。保護者からは「楽しみにしていたのに残念」との不満も漏れる。だが市担当者は「何が違反なのか分かりづらい」とも漏らす。

石川県輪島市教委は県内外の小中学生が輪島塗の体験や海水浴をするイベントを催してきたが、匿名の指摘があり、旅行業者への委託を決めた。

中止されたツアーの参加費は宿泊料や交通費など実費分で、補助を出して実費より安く設定した自治体もある。

旅行業法に詳しい金子博人弁護士は「イベントに必要な費用のみを集めるなら報酬に当たらない。『事業』は反復継続行為を指すもので年1回であれば違反と言いがたい。過剰反応ではないか」と首をひねる。

観光庁幹部は「旅行業法は旅行業者の監督を想定しており、自治体は念頭に置いていなかった」と説明。月内に参加者の安全対策を踏まえた上で実施可能な具体例を都道府県に通知する方針だ。

▼旅行業法 旅行の安全確保や旅行業務の公平性を維持するために1952年に定められた。旅行業を「報酬」を得て一定の行為を行う「事業」と規定。不特定多数の参加者を募って継続的に旅行を企画し、参加費を募れば国や都道府県への登録が必要になる。旅行業者は営業保証金の積み立てなどの消費者保護策の実施が義務づけられている。修学旅行、町内会や職場での旅行など顔見知りの範囲内で旅行をとりまとめる場合は旅行業とみなされず、登録の対象外となる。

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