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鉄道は地域と一体で存続 JR四国顧問 梅原利之さん(語る ひと・まち・産業)

観光振興 生かせる基盤

発足から30年。JR四国が大きな岐路に立つ。人口減に加え、整備が進む高速道路網が客足を奪う。25年後には利用者数が17%減るという推計もある。JR西日本から専務として移り、社長、会長を歴任した梅原利之顧問(78)は在来線の存続に危機感を強める。

うめはら・としゆき 1939年京都府綾部市生まれ。京大工卒、61年日本国有鉄道入社。JR西日本常務を経て、96年にJR四国専務。98年社長、2004年~08年に会長。相談役を経て現職。03~14年に香川県観光協会会長。

「四国は中学校の修学旅行以来だった。赴任した当時は1988年の瀬戸大橋開通後の観光ブームで得た収益を生かし、自己資金で予讃線の電化を進めるなど日本国有鉄道(国鉄)時代より設備は充実していた。一方で高速道路網の急速な発達に加え、低金利による経営安定基金の運用収益の縮小などですでに厳しい経営環境にあった」

「高速道路に対抗して高速化を実現するためディーゼル車では世界初の傾きを抑える振り子式列車を開発するなど車両の改良や安全対策に力を入れた。路線の大半を占める単線を最大限に生かすため分割・併合と呼ぶ列車の増結や切り離しを多用して効率を高めるなど知恵を絞った」

「ただ、現状では高速化には限界がある。大型投資できる体力にも乏しい。高速道路は車が走るための機能だが、鉄道は駅という拠点も含め全体で動く生き物だ。地べたをはう存在として地域と密接に関わってきた。鉄道を高速道路とバランスをとりどう存続させるか考える時期に来ている」

JR四国のトップと香川県観光協会の会長を10年以上兼務し、2009年には4県の官民が観光振興で連携する四国ツーリズム創造機構も立ち上げた。四国の観光が持つ潜在力の高さを信じる。

小学校の同級生らと瀬戸内海クルージングを楽しむ梅原さん(右端)

「瀬戸内海の美しさはアドリア海やエーゲ海を超える。70歳を前にプレジャーボートの運転免許を取り、クルージングを楽しむようになったほどだ。愛媛県の宇和島から高知県にかけても自然や歴史が残る好きな場所で何度も訪れている」

「四国は自然が豊かで、うどんなどの食やお遍路のような伝統文化が受け継がれ、観光資源として宝物がいっぱいある。四国に来なければ、その良さに気付くことがなかった。鉄道は地域と一体であり、観光振興に生かせるインフラ。アンパンマン列車や最近の観光列車のような形でも貢献できる部分は大きい」

今最も注力するのが四国新幹線の誘致だ。在来線を守るためにも高速鉄道網との結びつきが重要と四国内で訴え続けてきたが、最近は関西経済界に向けて西日本全体の浮揚にも有効と協力を求める。

「東京一極集中を改めるには西日本が連携を強めるしかない。その意味で四国新幹線の早期実現は関西にも意義があると主張してきた。関西経済同友会に加入し直して働きかけを強めた結果、理解が広がってきたと感じる。関西と四国4県の同友会が誘致活動で連携する動きも出てきた」

「新幹線の生みの親である十河信二総裁から入社辞令を受けた最後の世代。図らずも十河氏ゆかりの四国に縁ができた。また民営化前後に国鉄の金沢鉄道管理局長とJR西日本の金沢支社長として北陸新幹線の着工に携わり、地域を挙げた誘致運動の重要さを見てきた。関西人でもある。誘致の旗振りは鉄道人生で最後のご奉公だと考えている」

「新幹線の父」記念館に

《一言メモ》 愛媛県西条市は日本国有鉄道(国鉄)の第4代総裁で東海道新幹線の建設を推進した「新幹線の父」十河信二が旧制中学卒業までを過ごした。JR伊予西条駅そばの「鉄道歴史パークin SAIJO」内にある「十河信二記念館」には書斎が再現され、遺族が寄贈した自筆の書や愛用品などを展示する。

十河は戦前の鉄道院(のちに鉄道省)で将来を望まれていたが疑獄事件のため辞職。南満州鉄道(満鉄)理事などを経て戦後は西条市長を務めたが1955年、相次ぐ大事故による信頼失墜でなり手がいない国鉄総裁に71歳で迎えられた。

反対派の抵抗や予算不足を乗り越え、強烈な指導力で新幹線実現にまい進したが、建設費膨張の責任などを問われて新幹線開業の前年に再任されず、出発式にも招かれなかった。(高松支局長 真鍋正巳)

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