2018年11月17日(土)

政権に「チルドレン」の呪縛
追い風当選・自民2回生 不祥事相次ぐ

2017/7/14 18:16
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2日に投開票した東京都議選は自民党が過去最低の23議席しかとれず、歴史的な惨敗を喫した。学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る問題や、稲田朋美防衛相の失言があったため――と指摘されたが、同時に取り沙汰されたのが「2回生問題」だ。衆院当選2回の自民党議員が引き起こす騒ぎが報道され、少なからず選挙戦にも影響があったとみられている。なぜ若手議員の問題が頻発するのだろうか。

「また自民党の『魔の2回生』だ。国会議員としての資質があるとは到底思えない」。都議選告示前日の6月22日。民進党の蓮舫代表は記者会見でこう攻め立てた。

この日発売の「週刊新潮」は、自民党の豊田真由子衆院議員が男性秘書(当時)に吐いた暴言を報道。豊田氏は週刊誌が出回ると、同日中に事務所関係者を通じて党本部に離党届を出した。

豊田氏は自民党が政権復帰した2012年の衆院選で初当選した議員。12年の衆院選では、自民党の新人が119人も大量当選し「安倍チルドレン」と呼ばれた。その中で14年の衆院選も勝ち抜いた104人の議員の生き残りの多くが、いまの2回生だ。

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昨年は育児休暇の取得を掲げながら、女性タレントとの不倫が発覚した宮崎謙介氏が議員辞職。今年は台風の被災地視察の対応を巡って「長靴業界はだいぶもうかったんじゃないか」と発言した務台俊介氏が内閣府政務官を辞任した。中川俊直氏も女性問題で経済産業政務官を辞任し、自民党から離党した。

「それぞれ独立した問題だ」(細田博之総務会長)との声もあるが、不安の種ではある。2回生のほとんどは12、14年と、自民党が大勝した風にのって当選してきた。逆風の選挙は未経験。「自ら汗をかいて選挙の地盤を固めてきたわけではない」との指摘が多い。

次の衆院選では小池百合子都知事が率いて都議選で大勝した地域政党「都民ファーストの会」が国政に進出する可能性が取り沙汰される。

09年衆院選では、当時300の小選挙区で共産党が候補者擁立を152にとどめ、旧民主党による政権交代を後押しした。野党共闘が進めばどうなるのか。2回生は逆風にさらされかねない。

下村博文幹事長代行は2回生について「きめ細かく、必要に応じてフォローする必要がある」と話すが特効薬はない。

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過去にも初当選の「チルドレン」が大量に誕生し、その後の選挙で大量に落選する現象が繰り返されてきた。

05年、当時の小泉純一郎首相が郵政民営化の賛否を問い衆院を解散。自民党は296議席と大勝し、83人の初当選組「小泉チルドレン」が生まれた。稲田氏も郵政民営化反対派に「刺客」として送り込まれた「小泉チルドレン」だった。

「はやく料亭に行ってみたい」など枠にはまらない言動で話題になった杉村太蔵氏など「小泉劇場」の象徴として新人議員には注目が集まった。小泉氏が首相を退くと、野田聖子氏ら郵政民営化反対派が復党。09年の衆院選では多くのチルドレンが落選し、再選したのはわずか9人だった。

その裏で09年衆院選では政権を獲得した旧民主党が143人の新人を誕生させた。選挙を仕切った小沢一郎代表代行(当時)の名をとって「小沢チルドレン」「小沢ガールズ」と呼ばれた。このうち12年衆院選で再選したのは5人だけ。旧民主党以外から出馬した議員を含めても再選は11人どまりだった。

旧民主党政権では消費増税などを巡り「親小沢」と「反小沢」の対立が先鋭化。旧民主党政権の閣僚経験者は「新人議員が先輩議員を罵るような場面があった。党内政局に多くの新人が駆り出された」と振り返る。12年に旧民主党は分裂した。

振り子のように衆院選の勝敗が大きく動くのは、96年衆院選から導入された小選挙区制の影響が大きいためだ。

それまでの中選挙区制は各選挙区で複数人が当選した。同じ選挙区内で自民党の各派閥が勢力争いを繰り広げ、資金を集める構図に政治不信が募った。小選挙区制は二大政党制の確立とクリーンな政治を目指して導入された。各選挙区の勝者は1人でオセロゲームのように勝敗が入れ替わる。そうして若手の大量当選や大量落選が発生する。

新人教育も変わった。中選挙区制の時は、党内各派閥が出馬前から自派閥の候補を探し、当選後も面倒をみた。カネや人事に影響力を持つ派閥が、政策や国会運営、政治家としての振る舞いを教え込んだ。小選挙区制のいまは公認権などを握る党執行部の力が強い。派閥のような指導は難しく、規律も働きにくい。

政策研究大学院大の増山幹高教授は2回生の問題が頻出することについて「昔は10年ぐらいかけて一人前の議員になれば良かったが、小選挙区制のもとでは1、2回生でも自分が前面に出る」と話す。かつては「陣笠」と呼ばれた当選回数の少ない議員も、小選挙区の代表として動く。

とはいえ、選挙制度を変え、派閥単位の政治に戻ることがいいわけではない。増山氏は「優れた人が政治家になれるよう候補者を選ぶ必要がある」と語る。現行制度下でいい候補を選び、十分な教育をする。政党は対応を求められている。

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