アリババ、シェア自転車に出資 中国新興企業に照準

アリババ集団などネット大手が中国で急成長する新興サービス企業を囲い込む動きが広がっている。「ofo」ブランドでシェア自転車を展開する大手、北京拝克洛克科技は6日、アリババ集団などから7億ドル(約790億円)の出資を受けると発表した。ライバルの「モバイク」も先月、騰訊控股(テンセント)などから6億ドルを調達したばかりだ。中国では新興サービス企業がネット大手傘下でさらなる成長を目指す事例が相次ぐ。

中国メディアによると、ofoはアリババを中心に中国中信集団(CITIC)の系列ファンドなどから総額7億ドル超の出資を受ける。出資比率などは不明だ。
ofoは現在、中国全土の100以上の都市で650万台を運用する。今回調達した資金を元手に今年末までに海外20カ国も含めた200都市で運用台数を2千万台に拡大する。
同社の戴威・最高経営責任者(CEO)は「シェア自転車は全世界で普遍的なサービスになる」と強調する。
足元では新興企業がシェア自転車に相次ぎ参入している。いずれもサービス内容はほぼ同じため、価格勝負になる。通常料金は「30分1元(約16円)」程度だが、各社は無料キャンペーンを展開。上海在住の女性(29)は「毎日使うが、ここ数カ月はお金を払ったことがない」と笑う。
業界全体が消耗戦に陥る中、すでにシェア自転車ビジネスから退出する企業も出始めた。6月には「3Vバイク」と「悟空」の新興2社が撤退を表明した。ofoとモバイクは巨額の資金調達により、積極的なキャンペーンで他社を追い落とす構えだ。中国の自転車シェアはこの2社に集約される公算が大きい。

中国では、あるサービスが人気になると新規参入が相次ぎ、過当競争に陥るケースが目立つ。いち早く頭角を表した新興企業に対し、アリババかテンセントが出資するケースが多い。
生鮮食品のネット通販ではテンセントが傘下のネット通販大手、京東集団を通じてサービス提供するのに対し、アリババは新興の「盒馬(フーマー)鮮生」に出資している。スマホで料理の宅配を注文できる「出前アプリ」や動画配信でもそれぞれに陣営を抱える。
アリババやテンセントは、新しいサービスを自社のプラットフォーム(サービス基盤)に加え、顧客の利便性や自社サービスへの依存度を高められる利点がある。一方、新興企業も資金調達に加え、ネット決済など大手2社が提供する既存サービスとの相乗効果を期待できる。
もっとも、アリババとテンセントが新たなサービス分野を寡占する弊害を懸念する声も出てきている。
ライドシェア(相乗り)やタクシー配車アプリの分野では、アリババとテンセントがそれぞれ出資する2社が合併した。誕生した「滴滴出行」が2016年にライバルの米ウーバー・テクノロジーズの中国事業を買収し、国内の寡占状態を築いた。その結果、料金が実質的に値上げされるなど利便性が低下している。
(上海=小高航、張勇祥)