/

吉利、東南アでボルボ生産 出資のプロトン工場活用

中国の自動車大手、吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団とマレーシアのプロトン・ホールディングスの親会社DRBハイコムは23日、プロトンと子会社の英ロータスの株式売買で最終合意した。吉利は総額約260億円を投じてプロトンの49.9%の株式などを取得。同社工場で高級車ブランドのボルボ・カーの車両と低価格の多目的スポーツ車(SUV)を生産し、両方の価格帯で東南アジアに攻め込む。

「プロトンは吉利との協働で、マレーシア国内だけでなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場でシェアを伸ばせる」。23日に記者会見した吉利の李書福董事長は強調した。

プロトンの工場は年約35万台の生産能力を持つが、販売台数は年10万台以下と低迷している。吉利はこの余剰設備を活用し、高級車ブランドのボルボ・カーの車両や吉利のSUV「博越(BOYUE)」を組み立てる方針を示した。東南アジアでの中核生産拠点と位置づけ、同地域での販売を強化する。

ボルボ・カーは吉利が2010年に米フォード・モーターから買収し、中国企業による先進国ブランドの大型買収として注目を集めた。吉利は中国東北部の黒竜江省大慶市などでボルボ・カーの乗用車を製造。所得水準が上がり、高級車需要の高まる中国で販売を伸ばしたことで、09年に30万台程度にとどまっていたボルボ・カーの世界販売台数は16年に53万台に達するまでになった。

吉利はボルボ・カーの車両を中国東北部などで生産している(黒竜江省大慶市の工場)

東南アジアでボルボ・カーの存在感は小さいが、独ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」がけん引して高級車市場も伸びてきた。吉利はボルボ・カーを現地のプロトンの工場で生産して競争力を高め、東南アジアの成長を取り込む考えだ。

吉利はボルボ・カーが培ってきた技術を吉利ブランドの車に熱心に注ぎ込んでいる。5人乗りで排気量1800~2000ccの博越はその一つだ。中国での販売価格は最も安いモデルで10万元弱(約160万円)と日米欧ブランド車の半値近い安さで人気を集める。マレーシアではプロトンのブランドで販売する見込みだ。

吉利は現金1億7030万リンギ(約44億円)のほか、約2億9000万リンギ相当のSUVの生産設備をプロトンに投入する。プロトンが持つ英高級車ロータスの株式51%も1億ポンド(約140億円)で取得する。吉利は9月末ごろまでに出資手続きを終え、経営陣を送る。

23日、合意内容を発表する吉利の李書福董事長とDRBハイコムのファイサル・アルバー社長(クアラルンプール)

李董事長はさらに会見で、英ロータスのスポーツ車についても「最終決定はしていないが、可能性はある」と中国生産を検討していることも明らかにした。

吉利の16年の新車販売台数は約76万台で、中国国内における市場シェアは3%弱。地方の若者の需要をつかみ、販売台数を15年比で約50%増やした。低価格帯の吉利ブランド、高級モデルのボルボという現在のラインアップに、スポーツ車を加える。今回の出資には主軸の中国事業の基盤を強化する狙いもある。

日系の牙城 競合に時間

吉利は傷ついたマレーシアの国民車メーカー、プロトンの再建を主導し、日本車の牙城である東南アジアでの事業拡大を図る。

プロトンは1983年に設立。政府の保護の下、一時は国内シェアが5割を超えたが、近年は同じ国内メーカーのプロドゥアや外資勢に押され販売が低迷している。吉利は工場の余剰設備を使って高級車やSUVを生産し、てこ入れする。同社幹部は「プロトンは予想よりずっと早い黒字化が可能だ」と自信を示す。

マレーシア政府も研究開発費の一部に補助金を出して支援する。23日の最終合意に立ち会ったナジブ首相はボルボを再建した吉利による出資の意義を強調。「年320万台の東南アジア市場でプロトンが事業を広げてほしい」と期待を示した。

東南アジア市場はトヨタ自動車ホンダなど日系メーカーがシェア8割を占める。吉利は高級車から低価格車までそろえ、同市場で上位3位に食い込むことを目指している。

東南アジアの自動車産業に詳しい野村総合研究所タイの山本肇シニアコンサルタントは「強いブランド力を確立している日本メーカーにとって吉利がすぐに大きな脅威にはならない。吉利が日本車と競合するためには相当の時間とカネをかける必要がある」とみる。

海外事業を強化してさらなる成長を狙う吉利の本気度が試される。

(クアラルンプール=中野貴司、上海=小高航)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン