東芝、交渉見切り発車 総会前決着にこだわり

2017/6/22 1:14
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東芝は21日、半導体メモリー事業の売却交渉で官民ファンドの産業革新機構などを優先交渉先に決めたが、あくまで法的拘束力のない決定事項だった。自社の同意がない売却に反対する協業先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立が解消しておらず、28日の定時株主総会を前に見切り発車した。28日までの売却合意をめざすが、WDは反発しており、着地点はいまだみえない。

東芝メモリ四日市工場(三重県四日市市)

東芝メモリ四日市工場(三重県四日市市)

東芝は21日開催の取締役会で、革新機構と日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタルの連合を優先交渉先に選んだ。韓国半導体大手のSKハイニックスも連合と連携する。東芝は「拘束力のある書類などに署名したわけではない」としている。決裂時に違約金が発生するケースなどがある優先交渉権を付与する契約は結ばず、「約束」にとどまる形で対外発表した。

東芝は今回、交渉を前進させることにこだわった。

WDが米裁判所に売却差し止めを求めて提訴するなど、WDとの対立は激化し先行きは見通せない。売却先候補と契約を結んで交渉を進めるのはリスクがある。

だが一方で、法的手段に訴えながらも、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などと組み入札陣営に加わる姿勢もみせてきたWDの戦術で売却交渉は遅延している。WDの意図は売却交渉を撤回に追い込み、有利な条件で協業する四日市工場(三重県四日市市)の権益を拡大することにあるとの判断に東芝は傾いている。

東芝は上場廃止基準に抵触する2期連続の債務超過を避けるためメモリー事業の売却手続きを2018年3月末までに完了させる目標だ。ただ、売却先に対する独占禁止法の審査期間を考慮すると時間がない。

28日開催の株主総会では、17年3月期決算の報告を断念した。監査法人との調整が長引き、決算の確定作業が遅れているためだ。メモリー事業の売却にめどをつけられないと経営再建に向けた明るい材料に欠ける。株主に再建の前進を訴えたいという意向も今回の決定を後押ししたようだ。

だが、売却の正式契約を結ぶのは簡単ではない。東芝が優先交渉先を発表した2時間後、WDは「東芝は我々が持つ拒否権、手続き中の2つの法的措置を無視している」との声明を発表して改めて反対姿勢を示した。声明文で革新機構などの陣営で真っ先に競合の韓国SKハイニックスの社名を挙げ、同社が加わることに強い抵抗を示した。

WDの訴訟は7月14日に法廷審問が予定され、その日にも売却差し止めの仮処分裁定が下る可能性もある。仲裁裁判の手続きにも時間がかかる見通し。紛争が長引いた場合、東芝は円滑にメモリー事業を売却できないというシナリオも起こりうる状況だ。

東芝の資金繰りを支える主要銀行のある幹部は日米韓連合について「(参加者が多く)迅速な意思決定ができるか」と疑問視する。一部主要行は売却の完了時期が来年4月以降にずれ込むことも視野に入れ始めている。

交渉先選定に大きな影響を与えてきた経済産業省は、革新機構を軸とした支援スキームを検討してきた。東芝メモリを日本の技術革新の核とみるだけに、とりわけ技術流出には神経をとがらせてきた。今回、日米韓連合が頭ひとつ抜け出し、技術流出と雇用不安に歯止めをかけられる可能性は高まったのは大きいとみているもよう。ただ、東芝本体の成長戦略は見えず、経産省幹部は「東芝が資金を手にしても、有効活用されるかどうか」と語っていた。

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