米失業率、16年ぶり低水準 5月4.3%、利上げ観測高まる

2017/6/3 1:50
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【ワシントン=河浪武史】米労働省が2日発表した5月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、失業率が4.3%と前月から0.1ポイント改善し、16年ぶりの低水準となった。景気動向を敏感に映す非農業部門の雇用者数は前月比13万8千人増えた。米連邦準備理事会(FRB)が重視する雇用情勢は好調さを維持しており、今月中旬の会合で追加利上げに踏み切る可能性が強まった。

失業率はIT(情報技術)バブル末期の2001年5月(4.3%)と並ぶ水準まで低下した。FRBが完全雇用とみる失業率の水準は4.7%で、足元の雇用環境は逼迫感が強まっている。

雇用者の増加幅は好調の目安とされる20万人を下回り、市場予測(18万人程度)に届かなかった。4月の増加幅も速報値の21万人から17万4千人へと下方修正した。ただ、イエレンFRB議長は完全雇用下での就業者の伸びを「7万5千~12万5千人が適正」とみており、利上げ判断の強い逆風とはならなさそうだ。

FRBは13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3月に続く利上げの是非を討議するが、先物市場は既に9割の確率で引き締めを織り込んでいる。FRBは5月初旬のFOMCで「経済指標が想定通りなら、まもなくの利上げが適切だ」と判断している。

2015年、16年はそれぞれ年1回の利上げにとどまってきたが、次回会合で利上げすれば今年は半年で2回となり、引き締めペースが加速する。米経済は1~3月期の成長率が鈍化したものの、雇用情勢は好調で、国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費が失速するリスクは小さい。

ただ物価上昇率は4月も前年同月比1.7%にとどまり目標の2%に届かないままだ。FRBのブレイナード理事は「不安材料だ」と指摘し、FOMCで投票権を持つミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「インフレ率が懸念だ」と訴える。

イエレン議長は歴代議長の中でも引き締めに慎重なスタンスをとり、それが年1回ペースという過去例のない緩やかな利上げにつながっていた。にもかかわらずFRB中枢が、物価停滞下で引き締め加速に転じるのは、懸念材料が「雇用不足」から「雇用過熱」に変わってきたためだ。

5月の雇用者数の伸びはイエレン氏らが巡航速度とみる水準を上回り、失業率も完全雇用とみる水準より低い。経済の実力を上回って雇用が過熱すれば、いずれ企業は雇いすぎた就業者を調整するため人員カットに動く。失業率の反転上昇が家計の心理悪化などを招き、ゴールドマン・サックスなどは景気後退に陥るリスクを指摘し始めた。

「物価の停滞は一時的な要因だ」。FRBのパウエル理事は1日の講演でそう指摘し、追加利上げ路線を鮮明にしている。同氏は労働市場の逼迫がさらに強まれば、過熱にブレーキをかけるため利上げペースを加速する可能性にも言及した。

FRBは雇用と物価という強弱2つの指標の見極めに苦慮してきた。平均時給は5月も前年同月比2.5%増にとどまる。FOMC内には「完全雇用に達したかどうか疑わしい」(カシュカリ氏)と根本から疑問視する声すらある。

強気の利上げシナリオが裏目に出れば、米景気は上昇機運を損なうことになる。

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