米中、経済で一転接近 牛肉輸入や「一帯一路」協力

2017/5/13 0:22
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 【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中両政府が11日、貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」の具体策を発表した。中国は農業や金融分野で米国勢に市場を開放し、米国側は中国の国家事業であるシルクロード経済圏構想「一帯一路」に協力する。4月の首脳会談から1カ月強という短期合意には、北朝鮮問題を巡って協力関係を探る両国が、経済面でも接近しつつあることを明らかにした。

 「米中貿易の歴史からみても、かなりの偉業をなし遂げた」。ロス米商務長官は記者団にそう誇った。

 11日発表した具体策は10項目で、中国側がBSE(牛海綿状脳症)問題でストップしていた米国産牛肉の輸入を再開するほか、金融部門では格付け業務や債券引受業務などを解禁する。米国側は中国の液化天然ガス(LNG)調達を後押しし、「一帯一路」構想をめぐっては14、15両日に北京で開かれる国際会議に政府代表を派遣する。

 トランプ米大統領と習近平・中国国家主席が初めて顔を合わせた4月6~7日の米中首脳会談では、貿易摩擦回避へ具体策を100日間で協議することで一致した。100日がたつ7月中旬を待たずに早くも成果を発表したのは、米中双方の思惑が働いたとみられる。

 トランプ政権にとって対中貿易の不均衡是正は選挙時の最大の公約の一つ。米連邦捜査局(FBI)長官の更迭問題で再び内政がきしむ中、経済外交の成果はアピールしやすい。

 トランプ氏は大統領選挙戦中に対中貿易を目の敵にして「中国を為替操作国に指定する。中国製品には45%の報復関税をかける」と厳しく批判してきた。それが北朝鮮問題を巡って中国との協力関係を探りつつ、経済面でも急接近し始めた。

 中国側が得たものも少なくない。商務省の兪建華次官は「今回の合意は『米中が貿易戦争を始める』との見方を変えた」と胸を張った。米中関係の安定は今秋に共産党大会を控える習氏にとって外交面の最優先課題だった。同氏が提唱した「一帯一路」への米国の協力も取りつけた。

 合意内容でも牛肉輸入や金融市場開放など中国側が譲ったかにみえるが、実は痛みを伴う譲歩をせずにむしろ果実を得ている。牛肉はオバマ政権末期の昨年9月に既に輸入禁止措置を取り消し済み。トランプ氏の大統領就任まで輸入開始のカードを温存していた格好だ。債券市場の開放も米機関投資家を呼び込めれば資本流出に悩む中国には朗報だ。

 11日には同時に今夏に「包括経済対話」を開いてさらに協議を進めるとし、1年間の長期計画も策定すると発表した。今回の合意には米国側が問題視する中国製鉄鋼の不当廉売対策などは盛り込まれなかった。牛肉とLNGの対中輸出だけでは年3千億ドル超の米国の対中貿易赤字は容易には減らない。「今回は10項目だけだが、議題は500項目以上ある」。ロス長官はそう強調し、追加協議を求める姿勢だ。

 日米両国は4月中旬に東京で経済対話を開催した。事務レベルの下交渉で中国の「100日計画」と同じような工程表づくりを米国側から求められたが、日本側が断ったとされる。その後、ロス氏は日本の貿易赤字が大幅に増えたことに「耐えがたい」と表明。一方で貿易赤字の半分を占める中国には「改善している」(米商務省)と日中への姿勢を明らかに変えてみせた。

 2月中旬に訪米した安倍晋三首相は、日米首脳会談に先立つ全米商工会議所での会合で「鉄鋼はある国の過剰生産で、世界的な安値を招いている」と暗に中国を批判。米政権の強硬な対中姿勢に足並みをそろえることでトランプ政権の懐に入ろうとした。ただ、摩擦が懸念されたのとは逆に米中経済が急接近すれば、米国が求める日本との2国間自由貿易協定(FTA)協議に強く影響しそうだ。

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