日本の稼ぎ 投資が軸 16年度経常黒字、リーマン前に迫る

2017/5/11 23:36
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日本の稼ぐ構図が大きく変わってきた。海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支の黒字額は2016年度にリーマン・ショック前に迫る水準を回復した。貿易黒字は当時の4割の水準に落ち込む一方、企業が外国の株式などへの投資から得る所得が増えている。ただ企業が海外で得た稼ぎをそのまま海外に再投資した収益は過去最高。企業などの稼ぎが国内の雇用や税収に結び付きづらくなっている。

16年度の経常黒字額は15年度比13.1%増の20兆1990億円。リーマン・ショック前の07年度以来、9年ぶりに20兆円の大台を超えた。

顕著なのは企業が持つ海外の株式や債券の配当などから得る所得収支の黒字額の拡大だ。16年度は経常黒字の9割近くを占め、07年度の7割弱から割合は大きく高まった。なかでも増えているのは日本企業が海外企業に経営参加したり支配したりするために株式などを保有する直接投資から得る収益だ。16年度は7兆4573億円と07年度の2.1倍に高まった。

リーマン・ショック後に急速に円高が進んだ過程で、企業は海外で稼いだお金を日本に還流させず、海外での再投資に振り向ける動きを強めた。直接投資収益のうち、再投資から得られた収益は16年度に3兆9631億円と過去最高。07年度の2.5倍に増えた。

大和総研の長内智シニアエコノミストは「円高が急速に進んだ局面では国内の競争力が落ち、グローバル展開する企業が海外で稼ぐ力を高めた。今後も地産地消の流れは止めにくい」と話す。

人口減少が進む日本の潜在成長率はゼロ%台で低迷している。日本企業の投資マネーはアジアの新興国や米国など成長期待の高い地域に流れる。企業が海外での再投資を増やすと、経常収支が拡大しても国内の雇用や税収が増えづらくなる。

企業の海外での活動が活発になった一方、減少したのは貿易黒字だ。貿易黒字額は07年には13兆6862億円と経常黒字の6割近くを占めていたが、16年度には3割弱にまで構成比が縮んだ。企業が生産拠点を海外に移したため輸出が減少。東日本大震災後に国内で火力発電向けの化石燃料の需要が高まり、輸入は増加傾向となった。

先行きは海外経済の情勢が左右しそうだ。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「外需が好調さを保てば経常黒字は緩やかに拡大する」と指摘する。ただ、トランプ米政権が保護主義的な傾向を強めるなかで円高・ドル安が進行すれば、「黒字縮小の方向への圧力が強まってしまう」と懸念も示す。

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