2019年1月22日(火)

トルコ揺らぐ民主主義 大統領の強権化、国論を二分
国民投票で改憲承認

2017/4/18 1:26
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【イスタンブール=佐野彰洋】大統領に権限を集中させる憲法改正の是非を問うトルコの国民投票は16日、賛成派が51.4%と僅差で勝利した。大統領が強大な権力を握り、中東と欧州をつなぐ地域大国の民主主義は大きな転換点を迎える。薄氷の承認はトルコ国民の分断を浮き彫りにした。独裁化を懸念する欧州との摩擦が激しくなる恐れもあり、トルコの先行きは楽観できない。

「国民は歴史的な決断を下した」。エルドアン大統領は16日夜、勝利宣言した。国営アナトリア通信によると、開票率100%で賛成51.4%、反対48.6%と、賛成が過半数に達した。

エルドアン氏は17日、首都アンカラで国家安全保障会議と閣議を主宰する。昨夏のクーデター未遂事件後に発令し、19日に期限を迎える非常事態宣言の3度目の延長を決める見通しだ。反政府とみなす公務員らの追放や企業の接収など強権的な弾圧を続ける構えだ。

改憲を巡り、国論は真っ二つに割れた。エルドアン氏が賛成票を掘り起こすキャンペーンを展開したにもかかわらず、81県のうちイスタンブール、アンカラ、イズミルの三大都市を含む33県で反対が賛成を上回った。エコノミストのウール・ギュルセス氏によると、域内総生産トップ20県のうち13県が反対多数。すでに経済的に豊かな地域ほど強権への反発が強い。

投票を巡る不正疑惑も浮上している。野党は公式の押印を欠くなどした投票用紙が有効とされたなどと批判。投票結果は無効と主張し始めた。国民投票の実施状況を監視していた欧州安保協力機構(OSCE)は17日、「国際基準の順守に達していない」と指摘した。

だが大勢は覆らないとの見方がほとんどで、高等選挙委員会が約10日以内に最終結果を公表、確定させる。官報に掲載後、改憲が発効する。

「94年を経て新システムへ」(地元紙ヒュリエット)。1923年の建国以来、政教分離の世俗主義の下で民主化を進めてきたトルコは歴史的な転換点を迎える。

現行憲法では大統領は儀礼的な立場だが、2019年11月に実施予定の大統領選挙を経て、大統領が国家元首と行政の長を兼ねる体制に移る。大統領が司法の人事権や国会の解散権なども握り、三権分立を柱とする民主主義が後退する恐れがある。

14年の初の直接選挙で首相から大統領に選ばれたエルドアン氏は、名実ともに最高権力者として強大な権力を手に入れる見込みだ。任期は2期10年のため、29年までの長期政権が視野に入る。

トルコ国民はイスラム教の信仰心が厚い層と、政教分離を重視し、西洋的な生活を楽しむ世俗派に二分される。旧来のエリートである世俗派は敬虔(けいけん)なイスラム教徒を社会の主流から疎外してきた。貧しさに不満を抱くイスラム教徒がエルドアン氏の強力な支持層となっている。

エルドアン氏は社会の不満を自身の権力強化に利用した。クーデター未遂や相次ぐテロなど治安の悪化も重なり、安定のために強権を追認する空気も社会に広がった。

トルコ統計局によると、主力の観光業の低迷などで16年の国内総生産(GDP)成長率は2.9%と、マイナス成長だった09年以来最低の水準だ。強い指導力で経済を立て直せるか。それには二分された国内社会の亀裂の修復に加え、強権統治に不安を抱く国際社会との調和が課題となる。

かつて欧州連合(EU)加盟交渉を進め、イスラム圏の民主主義指導者の模範とたたえられたエルドアン氏。トルコからの移民も多いドイツのメルケル首相とガブリエル外相は共同声明で「僅差の国民投票結果はトルコ社会がいかに深く分断されているか示している」と指摘。「トルコの指導者、特にエルドアン氏には(分断に対処する)責任がある」と断じた。

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