2018年1月22日(月)

公示地価上昇率、大阪が1~5位独占 商業地の全国地点別

2017/3/22 6:02
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 国土交通省が21日発表した2017年の公示地価(1月1日時点)によると大阪府の商業地の上昇率は5.0%と16年に続き都道府県で1位だった。訪日外国人の増加による商業施設の需要増が地価を押し上げ、地点別でも全国の上昇率5位内を大阪が独占した。住宅地は近畿2府4県のうち京都が下げ止まったが、他府県は人口減や都心回帰で下落した。

 商業地は大阪府が4年連続で上昇した。上昇率は1位の大阪市中央区道頓堀1丁目をはじめ、5地点が3割超と全国上位を占めた。16年前半は中国人観光客らの「爆買い」が減ってホテル需要に陰りがみられたが、同年後半から商業施設の需要は底堅さを増した。

 最高価格は大阪市北区の「グランフロント大阪南館」で1平方メートルあたり1400万円と18.6%上昇した。不動産鑑定士の真里谷和美氏は「訪日客増加で収益が拡大し土地の取引価格が上がっている。(低金利で)資金を調達しやすいことも影響している」とみる。

 京都府の上昇率は4.5%と、都道府県別で大阪府、東京都、宮城県に次いで4位だった。京都市東山区の四条通に面した祇園地区は全国の地点別上昇率でも6位につけた。「ホテルはマンションより高い価格を提示することが多く(地価上昇を)リードする度合いが強まっている」(不動産鑑定士の森口匠氏)

 兵庫県は2年連続で上昇した。地点別の上昇率1位は神戸市の三宮からやや離れた旧居留地(17.2%)。不動産鑑定士の多田敏章氏は「(再開発による)周辺部への波及効果が出ている」と説明する。

 奈良県は0.05%上昇。県中部や西部が下がる一方、奈良市で近鉄奈良駅周辺が上がった。

 和歌山県の下落率は16年より拡大した。滋賀県は4年連続で上昇。大津市など県南部で上昇したが、ホテル建設は少なく上昇率は抑えられた。

 住宅地は京都府が9年ぶりに下げ止まり横ばい。京都市上京区の京都御苑周辺を中心に高級分譲マンションの価格が高止まりしている。用地が不足気味な京都市中心部から交通アクセスや居住環境のよい向日市などにマンション建設が広がる傾向がみられる。長岡京市や宇治市も上昇した。

 大阪府も住宅ローン減税や低金利を受けて大阪市中央区や北区、西区が上昇し、地点別では大阪市福島区福島3丁目が最高価格だった。だが千早赤阪村や豊能町が大きく下落したほか、東大阪市五条町の下落率は7.1%と府内で最大。府全体では小幅に下落した。

 兵庫県は下落率が拡大した。上昇地点は新駅のJR摩耶駅が昨年に開業した神戸市灘区などの都心部に限られた。

 奈良県は9年連続で下落。西都不動産研究所の竹村牧所長は「県民所得が回復せずデフレが続いているような印象」と分析する。和歌山県も下落した。滋賀県は9年連続で下落。草津と守山、栗東、野洲の県南部4市は上昇したが大津市は2年連続のマイナスだった。

■ミナミ急伸、キタに迫る

 大阪有数の観光名所、通天閣に近い大阪市営地下鉄・恵美須町駅(大阪市浪速区)。訪日外国人が多く乗降する出入り口からすぐの場所で、約360室の大型ホテルの建設が進む。同じ場所には2014年までシャープの営業拠点があったが、売却されていた。

 所有者はアジア系の大手旅行会社。不動産鑑定士によると「公示地価を大幅に上回る価格で土地が取引された」。新設するホテルは外国人客が多い「道頓堀ホテル」を展開する王宮(大阪市)が運営する計画だ。電機大手などのオフィスからホテルへ――。商業地の地価を支える「主役」の交代を映し出す。

 全国商業地の上昇率で5位内を独占した大阪市。大きく上昇したのは中央区道頓堀や心斎橋筋などミナミの繁華街だ。

 全国の上昇率2位だったミナミの戎橋北詰のビル「クリサス心斎橋」がある地点は12年時点でキタの「グランフロント大阪南館」がある地点より3割低かった。だが今回、価格差は1割に縮まった。「ミナミの地価が上がり続ければ来年にもキタを逆転するのでは」と大阪市内の不動産鑑定士は驚きを隠さない。

 オフィス移転や中小店閉鎖で空いた土地を埋めるのはホテルだけではない。存在感を増してきたのがドラッグストアだ。

■ドラッグストアも出店攻勢

 全国の商業地で上昇率4位だった心斎橋筋2丁目。立ち並ぶツルハやコクミン、ダイコクのドラッグストアでは大勢の外国人客が医薬品や化粧品を買い求める。かつてヤマハ楽器店があった土地は16年に東急不動産に売却され、商業施設の建設が進む。不動産関係者には「ドラッグストアが核テナントになるのでは」との観測が飛び交う。

 マツモトキヨシは心斎橋筋や道頓堀周辺に16年だけで4店開業し、6店に増やした。家電製品や宝飾品のまとめ買いが一服した今も「医薬品や化粧品の買い物需要は底堅い」(マツモトキヨシ)。同社は戎橋北詰のビルにも入居した。

 訪日外国人客の旺盛な飲食需要も地価を底上げする。全国の商業地上昇率でトップだったフグ料理店「づぼらや道頓堀店」に近い商業施設「中座くいだおれビル」の入り口では名物人形「くいだおれ太郎」と記念撮影する観光客が絶えない。

 同ビルは上場不動産投資信託(REIT)の野村不動産マスターファンド投資法人が31日に116億円で取得する。同投資法人の資産運用会社、野村不動産投資顧問(東京)は「国内外の観光客を獲得できる場所としてテナントのニーズを期待できる」とみている。

 キタも商業地の上昇が目立つが、需要のけん引役はオフィスではない。JR大阪駅周辺では阪神百貨店本店や新阪急ビル建て替えなど再開発が進む。全国の上昇率3位だった北区小松原町では、阪急東通り商店街付近の飲食店需要が伸びた。

 都心の商業地の地価上昇は今後も続くのか。「訪日客の目標が上乗せされ、ホテルはまだ開発機運がある」(大阪府用地課)。ミナミの一等地などはなお上昇余地があるとの見方が根強い。

 一方、過熱感を警戒する声も多い。一部のホテルでは16年に宿泊料を引き上げて需要が鈍り、稼働率が下がるケースも出ているようだ。

 地価上昇を宿泊料や賃料にどこまで転嫁できるのか。米不動産サービス会社、CBRE関西支社の橋川剛シニアディレクターは「ドラッグストアなどが退店すればほかに高額の賃料を支払える入居者がない。地価は下落する可能性がある」と指摘する。

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