2019年6月24日(月)

旭川大の公立化、財政負担の折衝難航

2017/2/22 7:00
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旭川市による私立旭川大学の公立(市立)化を検討する有識者の懇談会が今月、発足した。地元経済を支える若者を増やしたい市と、公立化で学生不足に歯止めをかけたい旭大の思いは重なるが、財政負担に絡む市と大学の折衝が難航、実現の見通しは立っていない。

「卒業生は半分が旭川や道北に就職し、地域を支えている」。旭大の山内亮史学長が昨年2月に市役所で西川将人市長に訴え、公立化を求める要望書を手渡してからちょうど1年。道内各地から集まった産学官の有識者9人による市長の私的な懇談会の初会合が今月2日に開かれた。

公益財団法人とかち財団(帯広市)の長沢秀行理事長(帯広畜産大学前学長)は「地域の産業をアピールすることが大事」と発言。旭川家具工業協同組合の渡辺直行代表理事(カンディハウス会長)は「家具業界はデザイン学科の開設を望んでいる」と説いた。

旭大は経済学部と保健福祉学部を擁し、幼児教育などを学ぶ短大を併設する。定員割れが常態化、15年度は定員が計1254人に対し在籍者は計1018人だった。

私立大を公立大にすれば私学助成金より多額の地方交付税交付金が国から自治体に配分される。授業料を引き下げて学生を呼び込めるとして全国の地方私大で相次いでいる。道内では昨年12月に千歳科学技術大学が公立化を求める要望書を千歳市に提出した。

旭大から要望を受けた旭川市が有識者懇の設置に1年を費やし、公立化を即決しない背景には財政負担増への懸念がある。市は昨年、学校法人側に、大学・短大だけの公立化、定員充足率が低い学部・学科の見直しなどの4条件を提示した。高校や幼稚園も運営する同法人に大学・短大を分離する経営改革を迫り、教員の雇用にも切り込む難題で、協議は平行線をたどっている。

旭川市は若者の流出が目立ち、旭大の学生不足にもつながっている。市によると、旭川では10~19歳は転入者数に対し転出者数が2~3倍と多い。市内の高校から大学などへの進学者は7割前後が市外に出て行く。

地元では市内にあった東海大学芸術工学部の学生募集停止を契機に、家具業界経営者らが11年に「旭川に公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会」を結成し、運動を続けてきた。

旭大からの要望が舞い込んだことで、旭大の公立化に伴いものづくり系学部を設置する方策が現実味を帯びている。有識者懇のメンバーでもある、市民の会の伊藤友一会長は「ここまで来たらゴーサインを出す会議にしたい」と意気込む。

有識者懇は8月まで5回開いて結論をとりまとめる。西川市長は「(18年までの)任期中に道筋を付けたい」と話す。地域の将来を担う人材をどう確保していくのか、行政の手腕が試される。(稲田成行)

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