リコー、埼玉の生産拠点閉鎖へ 複写機の競争激化で
リコーは7日、事務機や周辺機器の生産拠点である埼玉事業所(八潮市)を2018年3月に閉鎖すると発表した。主力である複写機の競争激化が引き金だが、リコーは従業員の大幅削減はせずに配置転換などで乗り切る考えだ。ライバルのキヤノンなどは医療分野の巨額買収で事務機の売り上げ減に備えるが、リコーは新規事業も育っていない。業績回復への道のりは依然不透明なままだ。
リコーは17年3月期は前期比で連結営業利益が6割減の400億円まで落ち込む見通し。これを受け昨年10月に構造改革を発表した。今回の埼玉事業所の閉鎖は国内でのリストラ第1弾となる。
約270人の従業員は神奈川県海老名市、同厚木市、静岡県御殿場市に移す。個別に異動を提案し、受け入れられない場合は早期退職となる。
リコー以外でも複写機事業は各社苦戦している。市場の成熟による競争激化と円高を受け、16年は大幅に売上高・利益ともに減らした。キヤノンや富士ゼロックスなども伸び悩むが、そのなかでも落ち込みが大きいのがリコーだ。今期の営業利益率は2%と、この1年で半減する見通しだ。
リコーは構造改革の目玉に人員配置の最適化をすえる。国内は本社人員を半減する。本社移転に合わせ、入りきらない人員を営業などに振り分ける。ITサービスとのセット販売など、新しい売り方ができない営業スタッフは削減する。
リコーは11年に3年間で1万人削減するリストラ案を発表した。しかし、社員の反発もあり中途半端に終わった。その結果、16年3月末の従業員数は10万9361人と、11年に比べ、逆に300人ほど増えている。
ピーク時の07年、キヤノンの事務機部門の営業利益率は22%。リコーも同事業で12%あった。しかし、市場の成熟から価格競争に陥り、プリンター本体、消耗品の価格とも下落した。キヤノンは東芝メディカルシステムズを買収。コニカミノルタも米医療IT企業などを買収、創薬支援分野にも進出するなど収益減を補うための手を打った。
一方、リコーの新規事業はまだ小さい。3Dプリンター事業や医療機器の脳磁計事業などを進めるが、主力事業の落ち込みを補うには力不足だ。印刷速度が遅いプリンターなど、「OEMも検討する」(三浦善司社長)というが、リストラや構造改革のスピードが遅れれば傷口はさらに広がりかねない。