三菱重工 背水の本社主導 MRJや造船、相次ぐ責任者交代

2017/2/3 0:32
保存
共有
印刷
その他

三菱重工業は2日、国産ジェット旅客機「MRJ」を開発する三菱航空機(愛知県豊山町)の社長として、水谷久和常務執行役員(65)を4月1日付で送り込むと発表した。水谷氏は防衛・宇宙事業の責任者。MRJは1月に5度目の納期延期を決めており、人事刷新で立て直す。不振の造船部門でも信賞必罰の人事があったばかり。三菱重工の混迷が深まっている。

三菱航空機の森本浩通社長(62)は3月末で退任する。2008年に事業化を決めた際には13年に初号機を納入する計画だったが、開発は大幅に遅れた。三菱重工出身の森本氏は火力発電プラントの海外営業が長く、航空機部門の常識にとらわれないリーダーシップと営業手腕を期待されて登板。だが安全性を高めるために設計を見直し、初号機納期はさらに2年遅れ、20年半ばになった。

宮永俊一社長は「人心を一新してもう一度頑張る」と強調。「1人のトップの責任で遅れたわけではない」と話したが、納入延期の直後で事実上の引責とも受け取れる。

これで三菱重工による中央集権の色合いが強まる。昨秋にMRJ事業を宮永社長の直轄としたが、今回は直轄組織を仕切る篠原裕一執行役員(58)を三菱航空機のナンバー2となる「業務執行責任者」として送り込む。宮永社長は「グループとしてMRJを推進する決意の表れだ」と語った。

本社主導を強めるのはMRJだけではない。造船の主力拠点、長崎造船所(長崎市)で今月1日に所長が交代。前所長は客船建造の巨額損失の責任を取らされたと業界でみられており、兼務していた建造子会社の社長も退いた。この子会社のトップには船舶・海洋事業部長の大倉浩治執行役員(59)が派遣された。

三菱重工は2日、すでに分社化した長崎の建造部門だけでなく、開発・設計、下関造船所(山口県下関市)、本社の営業部門を含む事業全体を7月に別会社にすることを検討すると発表した。足元の受注低迷で18~20年度の売上高は大きく落ち込む。逆風を乗り切れる体質に転換し、他社との提携協議を推進する。

宮永社長は13年の就任以降、独シーメンスと製鉄機械事業を統合するなど「選択と集中」を進め、一定の成果を出した。独立色が強い事業部門や生産拠点を本社で掌握することも目指した。だがMRJは開発費増に歯止めがかからず、造船立て直しも後手に回り続けた。米国の原子力事業で損害賠償請求を受け、損失発生リスクを抱える。

4月から航空・防衛・宇宙の事業全体を宮永社長が直轄することも決めた。不振事業の立て直しに手間取り、新たな損失を出す事態になれば、真正面から責任を問われるのは宮永社長本人だ。

(篤田聡志、花房良祐)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]