2019年1月21日(月)

将来世代の年金「賃金減でも維持」 新ルール試算
厚労省

2016/12/28 0:47
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厚生労働省は27日、新しい年金額の抑制ルールに基づき、賃金が下落した場合に年金の支給水準がどう推移するかの試算を公表した。リーマン・ショック級の経済状況では一時的に給付が減るものの、将来世代の基礎年金額は維持できると説明、新ルールの妥当性を主張している。ただデフレ下ですら給付を抑制できない現状は変わらず、年金改革はなお途上だ。

年金給付の新ルールは賃金の下落に合わせて年金額を減らす点が特徴だ。先の臨時国会で成立した改正国民年金法に盛り込まれた。

新ルールは将来世代の年金給付水準を維持するための仕組みだが、給付の抑制は不十分な状況が続く。年金給付の抑制は、今回の新ルールと年金支給額の伸びを賃金や物価の上昇分より抑える「マクロ経済スライド」の2段構えだ。

現状ではマクロ経済スライドはデフレ下で発動されないため、将来的な物価上昇が見通しづらい現状では支給額の抑制が難しい。過去10年間でマクロ経済スライドが発動できたのはこれまで15年度の1回のみだ。

試算はリーマン・ショックが起こった2008年度の名目賃金上昇率のマイナス0.5%と、09年度のマイナス3%を、新ルールが始まる21年度と翌22年度に当てはめて計算した。物価上昇率や年金積立金の運用利回りなど他の前提は14年に実施した年金財政の検証時と同じと想定した。

それによると、物価上昇率が1.2%、経済成長率が0.4%のケースでは、高齢者への年金支給額は26年度に新ルールを導入しない場合と比べて0.6%減る。

一方で将来世代の年金額は43年度から44年度にかけて0.6%増えると試算した。年金給付の財源は限られており、早めに給付の抑制が進めば将来世代の年金額は維持できるためだ。

今回の試算は基礎年金についてのみ示した。会社員が加入する厚生年金の数字は「焦点は基礎年金額で、試算にも時間がかかるため」(厚労省)として公表しなかった。

試算は新ルールが盛り込まれた改正法を「年金カット法案」として批判している民進党の求めに応じて実施した。試算公表後に開かれた民進党の会合では「前提が恣意的」(山井和則国会対策委員長)など、批判的な指摘が相次いだ。

一方「新ルールが必要とされる経済状況は例外的で、(賃金の減少を2年間とした)前提の置き方は妥当」(大和総研の鈴木準主席研究員)と指摘する声もある。

年金制度を長持ちさせるためには、年金額が現役世代の給料に占める割合を示す所得代替率を50%程度にまで落とす必要がある。しかし給付の抑制が進まず14年度時点では60%を超す。年金の永続的な制度維持のメドは立っていない。

 ▼賃金・物価スライド 賃金や物価の変動に合わせて年金の支給額を増やしたり減らしたりする仕組み。今は賃金が下がっても物価が上がったときには年金額を据え置いている。賃金の下がり方が物価より大きい場合も物価に合わせて年金額を変えている。2021年4月から、賃金の下落に合わせて支給額を減らす新しいルールに切り替える。保険料を負担する将来世代と高齢者世代が痛みを分かち合う仕組みだ。

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