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第一三共、見えぬ「特効薬」 特許切れに危機感 がん領域注力

第一三共が新薬開発で背水の陣に立っている。13日に開いた研究開発の説明会で、がん治療薬のテコ入れを急ぐ方針を表明した。高血圧薬など主力製品の特許切れ、いわゆる「パテントクリフ(特許の崖)」が今秋から始まったためだ。収益の先細りを回避する必要があるが、「特効薬」はなかなか見当たらず、危機感は強まっている。

「今後は優先順位をつけて新薬開発を進めていく」。説明会でがんの研究開発部門トップのアントワン・イヴェル氏はこう強調した。英アストラゼネカの抗がん剤開発の責任者だったが、今年4月にスカウトした。乳がん、胃がん、急性骨髄性白血病の新薬候補の説明に多くの時間を割いた。

国内製薬2位の旧三共と6位の旧第一製薬が統合して2005年に発足した第一三共の成長は止まっている。新興国開拓を狙って08年にインド後発薬大手ランバクシー・ラボラトリーズを約5千億円で買収し、勝負をかけたが、品質問題が発生。巨額の減損損失計上に追い込まれた。15年に同社の経営から撤退した。

売上高が3千億円規模に達する主力の高血圧治療薬が主要国で特許切れを迎えることも深刻だ。それを補う新薬が育っていないという危機感が、がん新薬強化の方針に行き着いた背景だ。

だが危機感は解消されていない。中山譲治社長は「がんは07年から重要テーマとしてきたが成果は出ていない。開発経験者が少ないことも弱点だ」と語る。4月にがん治療薬の研究開発を世界で一体化する専門組織を新設し、トップにイヴェル氏を招いたのは挽回策の一環だが、勢いを欠く。

3月発表の中期計画にはがん新薬の売上高を20年度に400億円以上、25年度には3千億円に育てる方針を盛り込んだ。だが05年に旧山之内製薬と旧藤沢薬品工業が統合して発足したアステラス製薬は前立腺がん治療薬だけで約2500億円を稼ぎ、17年3月期に約3千億円に迫る見通し。武田薬品工業もがん治療薬で3千億円超を稼ぐ。

同時期に誕生した第一三共とアステラスだが、明暗を分けたのは何か。アステラスは統合後に特許切れ問題に直面したが、それに備えた事業の取捨選択が奏功。大衆薬子会社売却や工場再編で、開発費用を捻出。的を絞った開発が奏功した。

第一三共は後手に回った。14~15年度に国内工場売却や米国の営業人員の削減などのリストラを実行。足元では仏販売子会社の社員の大半を解雇する方針だ。国内は17年4月に部長と課長級に相当する「グループ長」に役職定年を設け、実質的な人員削減を実施する。

市場では「開発品は充実してきたが、まだモノが出ていないので評価は難しい」(クレディ・スイス証券の酒井文義アナリスト)との意見がある。現金や有価証券など手元流動性は9月末で8千億円近くに上る第一三共。地道な研究開発と並行し、M&A(合併・買収)を含めた次の一手が必要だ。(早川麗、山本夏樹)

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