4県1~9月の訪日客宿泊最高、昨年1年間上回る 瀬戸芸が後押し
四国でインバウンド(訪日外国人)の集客が引き続き好調だ。観光庁の統計から集計した4県の今年1~9月の外国人延べ宿泊者数(速報値)は44万6570人泊と前年同期より41%増えた。最高だった2015年1年間の確定値をすでに超え、この勢いが続けば年間60万人泊の大台も視野に入る。ただ、高知・徳島両県は伸びが鈍り、さらなる拡大に課題もある。
四国全体の1~9月の伸び率は全国の12%を上回った。15年通年の前年比である57%増よりは増加のペースが鈍化してきたものの、10~12月も4割増を維持できれば16年は60万人泊を超え、過去2年で2倍強となる。
県別では香川県の1~9月の外国人延べ宿泊者数が23万8300人泊と四国全体の過半数を占めた。伸び率も53%と最も高かった。次いで愛媛県が10万7720人泊で49%増。すでに両県は15年の実績を超えた。
一方、高知県は15%増の5万3500人泊、徳島県は13%増の4万7050人泊。15年は高知県が71%増、徳島県も62%増だったのに比べると伸びにブレーキがかかっている。いずれも通年では15年実績を上回るとみられるが、1~9月時点では届かなかった。
3~11月に香川県を中心に開催された瀬戸内国際芸術祭は来場者約100万人の1割以上が外国人だった。直島(香川県直島町)は今年の延べ観光客数が約70万人とみられるが、半数以上が外国人という。今年は中国からが多く、「(大都市圏を中心とした)ゴールデンルート以外への旅行先の多様化を感じる」(直島町観光協会)。
10月に愛媛・広島両県の島々を結ぶ瀬戸内しまなみ海道で開かれた「サイクリングしまなみ2016」は参加者約3500人の7%が外国人だった。自転車愛好家の聖地を目指す愛媛県の国際交流課は「アジアに加え欧州からの観光客も増えている」という。
高松空港は芸術祭に合わせて3~11月に台北便が増えた。7月に香港の格安航空会社(LCC)が就航し、10月にソウル線もLCCとして増便された。松山空港は9月にソウル線が運休となったが、残る上海便の維持へ愛媛県と松山市が着陸料などの助成を広げた。一方で高知・徳島両空港は国際線がなく、集客の地域差を招いている。
日本政策投資銀行が公益財団法人日本交通公社と6~7月にアジアを中心とした12カ国・地域の海外旅行経験者に実施したインターネット調査によると、四国の認知度は14%と日本の他地域と比べ低い。経済効果が大きいインバウンドのさらなる呼び込みには、観光情報の発信や多言語対応の強化など、より細やかな集客策が求められる。高知県は海外で、よさこい祭りをPRするなど誘客のテコ入れに取り組む。
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