日立、IoTが人の動き分析 最適な作業方法探る

2016/10/25 23:43
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日立製作所は25日、あらゆるモノがネットとつながる「IoT」を使う効率生産システムを確立したと発表した。ICタグやカメラを使って装置や製品だけでなく、ヒトの動きも捉えるのが特徴。膨大なデータを人工知能(AI)で解析し、最も効率が良い作業方法を導き出す。すでに電力機器の生産期間半減に成功しており、新システムを社外にも売り込む。

「扉の取り付けで垂直、水平を気にしすぎだ」。2400人が働く日立の大みか事業所(茨城県日立市)。発電所や上下水道向けに出荷する巨大な制御盤の生産ラインで、ある検証データを示された作業員は驚いた。よかれと思って心がけていた細やかな作業が、逆に納期短縮の妨げになるというのだ。

部品や仕掛かり品を収める箱や棚に貼り付けたICタグは合計8万個。これでモノの流れを捉え、滞っていたり、問題が起きたりする工程を洗い出す。車輪付きの設備に載った高性能カメラが動き回り、効率が悪い工程で働く作業員の詳細な動きを画像に収める。

こうして集めた膨大なデータをAIで分析し、最適な組み立て方法や手順、作業姿勢を導き出す。「ムダなところにこだわりすぎていた」。熟練ぞろいの作業員でも気付かない改善点が分かることも多いという。

効果ははっきり出た。大みか事業所でIoTを使った生産改革を始めたのは昨年4月。主力の発電所向け制御盤は生産期間を180日から90日に半減した。少量多品種で、手作業が多い大型機器の生産ライン全体をIoTで効率化できることを実証したのは珍しい。

同様のシステムを鉄道や重機、医療機器向けに売り込む計画。2018年度に生産システムや関連機器の受注を4千億円上積みするのが目標だ。

IoTによる生産改善は米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスも力を入れる。センサーを使って機械の不具合を未然に検知したり、装置同士で情報をやりとりしたりしてコストを下げる技術で先行する。

日立は何が違うのか。「ハードとIT(情報技術)の両方を手がけるのは日立だけ。ヒトに頼った作業改善には自信がある」。日立のIoTビジネスを主導する北川央樹担当本部長は強調する。

熟練工の技術力の再現にも取り組む。「右肩の傾きが低すぎる」「首を振りすぎる」。豊富な経験が必要な溶接作業では、センサーと画像で匠(たくみ)の技を解析する。若手でも熟練工の能力にできるだけ早く近づける仕組みを開発中だ。

日本のモノづくりは、中国やアジア勢の猛追を受け、逆風が吹く。ヒトの能力を生かす技術は日本のモノづくりの最後の砦(とりで)だ。国内で生産拠点を残し続けるために日立が導き出した新たな解がIoTにヒトも組み込む戦略だった。

(阿部哲也、薬文江)

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