2019年4月25日(木)

VW、背水のEVシフト パリ自動車ショー

2016/9/30 1:20
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欧州自動車大手がディーゼル車から電気自動車(EV)へのシフトを強めている。先頭を行くのが排ガス不正問題で揺れた独フォルクスワーゲン(VW)だ。29日に開幕したパリ国際自動車ショーでは1回の充電で最長600キロメートルを走れるコンセプト車を発表。燃費規制強化も受け、背水の陣でEV開発を急ぐ。独ダイムラーなども同じ波に乗り、欧州発の新たなエコカー競争が始まる。

VWが披露したEVのコンセプト車。1回の充電で600キロメートルの走行をめざす(29日)

VWが披露したEVのコンセプト車。1回の充電で600キロメートルの走行をめざす(29日)

「20世紀のベストセラーとなった『ビートル』や『ゴルフ』と同様、自動車産業に次の変革をもたらすモデルになる」。VWブランド乗用車部門トップのヘルベルト・ディース氏が会場で胸を張り、世界で初めて披露したのがコンセプトEV「I.D.」だ。

開発中のEV専用プラットホーム(車台)「MEB」を採用し、2020年に生産を始める。電池など主要部品の配置を柔軟に組みかえられ、様々な派生モデルを造れる。部品共通化で量産効果を引き出し、「発売時にはゴルフ並みの価格に抑える」(ディース氏)。

VWは25年までに30車種以上のEVを投入し、グループ年間販売台数に占めるEV比率を現状の1%から最大25%に引き上げる計画だ。かつてはクリーンディーゼルでエコカー競争を主導しようとしたが、1年前に発覚した排ガス試験の不正問題が歴史的な方針転換の引き金を引いた。

だが欧州勢のEVシフトはVWにとどまらない。背景にあるのは燃費規制の強化だ。欧州連合(EU)は最も厳しく、21年に走行距離1キロメートルあたりの二酸化炭素(CO2)排出量を15年規制値より約3割減らす必要がある。三井物産戦略研究所の西野浩介産業調査第一室長は「ディーゼル車の進化だけで数値目標を達成するのは困難だ」と指摘する。

独ダイムラーはEV向け新ブランド「EQ」を立ち上げると表明。第1弾として1回の充電で最長500キロメートルを走れるコンセプト車を公開した。独オペルや仏ルノーも新型EVを披露した。

欧州勢は部品生産や充電インフラの投資も急ぐ。ダイムラーは独化学大手と共同出資した電池企業を14年に完全子会社にし、今年3月には5億ユーロ(約570億円)で第2工場を建設することを決めた。ドイツではEV普及のために官民が折半出資で総額10億ユーロを拠出し、うち3億ユーロで17~20年に計1万5千カ所の充電スタンドを整備する。

日本車大手は欧州でのEVシフトにやや距離を置く。トヨタ自動車が披露したのは今冬に日本で売り出すプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」。ガソリンを使わず電気だけで走れる距離は現行車の2倍強の60キロメートル。日常生活ではほぼEVとして利用できる点を訴えるが、純粋なEVとは異なる。

そもそもトヨタ、ホンダは燃料電池車(FCV)を次世代エコカーの本命に据えている。「電動化」という点では一致するものの、水素をエネルギーとするためEVとは違うインフラが必要だ。

欧州は現在、新車販売の約5割をディーゼル車が占めるが、次世代車はEV、PHV、FCVの三つどもえの競争となりそうだ。欧州勢は先端技術のデファクトスタンダード(事実上の標準)づくりにたけている。そのEVシフトのスピード感を甘く見ていると、日本車大手は思わぬ劣勢に立たされる可能性がある。

(パリ=加藤貴行、白石武志、横田祐介)

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