「無限責任」撤廃、結論出ず 原発事故賠償

2016/8/24 0:36
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原子力発電所事故の賠償制度の見直しを進める内閣府の専門部会は23日、中間報告をまとめた。これまで1200億円を上限としてきた政府補償の増額を検討する方針を盛り込んだ。一方、事故を起こした電力会社に金額の制限なく賠償を負わせる「無限責任制」をやめるかどうかは結論が出なかった。国と電力会社で責任をどう分担するかは曖昧なままだ。

原子力損害賠償法は原発を持つ電力会社が事故を起こしたときに、1200億円の賠償原資を確保できるよう政府補償と民間保険の契約締結を義務づけている。中間報告では1200億円の義務づけ額に関し「引き上げていくことを検討する」と明記した。

政府は1962年に原賠法を施行した当初に50億円としていた義務付け額を段階的に引き上げ、2010年に1200億円とした。

しかし、11年の東京電力福島第1原発の事故では、想定していなかった規模で放射能汚染が広がり、賠償額は6兆円超に膨らんでいる。東京電力(現東京電力ホールディングス)が事故直後に受け取った1200億円では、賠償に必要な費用をほとんど賄えなかった。

政府は11年に原子力損害賠償支援機構(現原子力損害賠償・廃炉等支援機構)を設置し、関西電力や中部電力などほかの電力大手も東電の賠償費を負担するという新たな仕組みでしのいできた。

専門部会は万一、また大事故が起きたときにだれがどれだけ負担するかを制度として定めるため、大学教授や弁護士らを集めて15年5月に発足した。23日の中間報告は1200億円をいくらまで引き上げるかには触れなかった。

中間報告はこのほか、福島事故で緊急措置として実施した国による賠償の立て替え払いをより迅速に発動するため、あらかじめ一般法を制定しておく必要性も明記した。賠償が時効にならないようにする制度の整備も盛り込んだ。

一方、事故を起こした電力会社の責任を現行どおり無限とするか、金額制限を設けて有限とするかは委員の間で意見が割れたままだった。

これまでの議論ではある委員が「賠償負担を5兆円までに制限すべきだ」と訴え、別の委員が「有限責任にすると安全投資を怠る」と反論する場面があった。

政府補償の上限を仮に2千億~3千億円まで引き上げても、福島第1と同じ規模の事故が起これば焼け石に水だ。専門部会は最終報告のとりまとめに向けて今後も議論を続けるが、国や電力会社、その株主と金融機関を含めたステークホルダー(利害関係者)の責任をどこまで明確にできるかは不透明だ。

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