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林業再興 過疎の村潤せ 奈良・十津川(まちは語る)
原木5年連続増 地元で家具生産

2016/8/13 6:00
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林業をビジネスとして復活させようと攻勢をかける自治体がある。村としては面積が日本最大の奈良県十津川村だ。林道を整備し、機械化を進めてコストを削減。住友林業の協力も得て原木を増産する。家具など付加価値化にも取り組み、過疎の村を豊かな"木のまち"に変えようと懸命だ。

近鉄奈良駅から電車、バス、自動車を乗り継ぎ南へ約4時間。十津川村に入ると、スギやヒノキの急しゅんな山々が眼前に迫る。標高800メートルの深い緑の山道をさらに30分南東へ進むと、玉置神社近くの伐採現場の土場にたどり着いた。原木約1000本が100~200本ごとに積み上げられている。村の今年度の原木生産量は45%増の2万立方メートルと5年連続増の見通し。数年内に3万立方メートルを目指すという。

■コスト削減徹底

ウォーン。ウォーン――。土場では若い作業員が重機による仕分けの真っ最中。搬出業者の責任者は「伐採原木は枝落としからサイズカット、搬出まで最新機械を導入しているので20~30代の若手でも大丈夫」と笑う。

伐採現場の土場では重機による仕分け作業が進む(奈良県十津川村)

伐採現場の土場では重機による仕分け作業が進む(奈良県十津川村)

十津川村の搬出業者は戦後のピークに約150社あり、原木生産量も年間25万立方メートルまで増えた。しかし、1970年代以降は海外からの輸入急増で生産は衰退。2011年には大水害に見舞われ、業者は2社に激減した。しかし、引退した技術者による講習や村外の技術者を招くなどの研修を重ねた結果、7社まで回復。今後は15社程度まで増やしたい考えだ。

更谷慈禧村長は「搬出業者が増え25人の雇用も生まれた。間伐や苗木栽培を徹底し、保水力が高く植生豊かな森をつくれば土砂災害防止にもつながる」と話している。

コンサルティング契約を村と結ぶ住友林業も協力する。特に林道整備については同社の提言もあり今秋、村南東部に全長5キロの林道「コリカキ竹筒線」が開通する。幅3.5メートルと通常の2.5メートルより広く10トン車が通れる。「林道整備で年3万立方メートルの出材が実現すれば、中国や韓国向けに輸出を本格化し販路を広げる」(住友林業山林部の坂口精一郎マネージャー)

現在、林業事業は赤字だが林道が整備されれば黒字化も見えてくる。木材価格は10年前比で3割超下がり輸入も減っている。コスト削減を徹底すれば世界で通用する。

■「非住宅」に活路

今のところ原木の販売先は、県内市場や県外の住宅資材の製材所が多い。だが、今後の人口減による着工減を考えると、住宅資材以外の家具やインテリアを村内でどう作るかが大きな課題だ。

そんな中で村は十津川村木工家具協議会で家具製造のプロジェクトに取り組み始めた。家具デザイナーの岩倉栄利氏の協力もあり、今年度の椅子や机などの受注額は前年度比3.4倍の3100万円になる見通しだ。

消費地でアピールするため村は10月に大阪で開かれる「まちデコール」と「LIVING&DESIGN」の2つの展示会で発表の予定だ。今後はネット販売も検討する。南都経済研究所の吉村謙一副主任研究員は「ICT(情報通信技術)を応用した山林・生産管理の高度化による低コスト林業が欠かせない」と指摘する。

(奈良支局長 浜部貴司)

森づくり、次代見据える 苗木や人材、育成着々
 十津川村の林業成功の鍵は50年後、100年後を見据えた森づくり、人づくりができるかにかかる。森づくりには苗木の植栽が欠かせない。だが従来の苗木は気候が適した春を中心にしか植栽できず、十津川の粘り気が少ない土質もあって活着しにくい面もあった。
 この問題を解決するのがコンテナ苗だ。根の部分に養分を含む土があらかじめ着いており、活着しやすい。植栽も1年中可能だ。村は住友林業からコンテナ苗の大半を買っているが「将来は自給できるようにしたい」(農林課の平宜史課長)という。現在役場で約60本を試験栽培している。
 人づくりも欠かせない。県立十津川高校は13年、原木を加工する木工技術を学べる工芸コースを設置。現在1年から3年まで35人が在籍する。県外の生徒も入学した。8月上旬には生徒2人が村の家具プロジェクトに参加した。
 「十津川」は日本の歴史の転換期に登場し、その役割に歴史家も注目してきた。大阪夏の陣で徳川方について豊臣方の一揆を鎮圧。幕末には天誅組に呼応し約千人が出兵した。産業構造の転換が求められる中、十津川の取り組みに関心が高まっている。

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