2017年11月18日(土)

サントリー・アサヒの和解促した需要減 ノンアルビール訴訟

2016/7/21 0:11
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 ノンアルコールビールに関する特許を侵害されたとして、サントリーホールディングスがアサヒビールに主力「ドライゼロ」の製造や販売差し止めを求めた訴訟の控訴審は20日、知的財産高裁和解が成立した。昨春から全面的に争ってきた両社が歩み寄った背景には市場環境の変化がある。

ビールの代替だけではノンアルビール市場は頭打ちになる(20日、東京都世田谷区のサミットストア)

 「ドライゼロを従来通り製造・販売できる内容に非常に納得している」(アサヒの開発担当者)

 「いたずらな紛争は望むところではなく十分に納得して和解に至った」(サントリーの代理人)

 和解成立後、両社とも和解内容に満足していると述べた。「互譲(譲り合い)の精神に基づき争わないことにした」というのが共通コメントだ。

 一審で敗訴したサントリーが控訴を取り下げ、アサヒがサントリーの特許に関する無効審判請求を取り下げる。従来通りドライゼロは製造・販売でき、サントリーの特許も維持される。金銭面は明言していないが「業績、バランスシートにまったく影響がない」(アサヒ)。訴訟前と変わらぬ「無風決着」といえる。

 裁判ではサントリーが主力の「オールフリー」で、糖質を抑えて飲み応えや風味をよくした成分調整の特許が有効かどうかが争点だった。サントリーはアサヒのドライゼロの成分が特許に抵触するとして2015年1月に提訴。10月の東京地裁判決は「進歩性がなく特許は無効にされるべきだ」とサントリーの請求を退けたが、サントリーが控訴し、アサヒは特許の無効を主張した。

 若者のビール離れや高齢化の進展でビール系飲料市場が縮小するなか、ノンアルビールは有望市場だった。酒税がないため利益率はビールの3倍前後とされる。販売量はビール系全体の約20分の1だが両社とも一歩も引かない姿勢を貫いたのは、量が増えれば稼ぎ頭になると期待したからだ。

 ただ、市場環境は変わった。業界推計によると市場は16年に1770万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で前年比1.7%増にとどまる見込み。ドライバーがビールの代わりに飲むような代替需要は一巡したとの見方が多い。

 特許訴訟では、関係する技術者が膨大な書類作成や裁判所への出廷に時間や労力を割かれ、研究開発が滞りがちになる問題が発生する。最高裁までもつれれば、さらに2年程度かかることもある。食品業界では15年に日清食品ホールディングスとサンヨー食品が麺の製法特許を巡る訴訟で和解するなど長期化を回避した例は少なくない。首位を争うサントリーとアサヒも「長く争ってもメリットはない」(両社関係者)との判断に傾いた。

 ノンアルビールはまだ発展途上だ。東京都世田谷区に住む主婦(32)は「昔よりおいしくなったけど、もっとおいしければいい」と話す。サントリーはコラーゲン入りの女性向け商品を発売。アサヒはランチ向け需要などもアピールして20万強の飲食店に納入を果たした。足の引っ張り合いではなく、商品や売り方でもっと競い合わないと共倒れに終わりかねない。

(名古屋和希、茂木祐輔、編集委員 渋谷高弘)

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