足りぬ人手、北陸の旅館も変身 老舗にバイキング、派遣も活用

2016/7/20 6:01
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北陸の旅館が人手不足対策に取り組んでいる。サービスの方式や業務を見直して生産性を高めたり、派遣社員など非正規の人材を増やしている。北陸新幹線の開業で需要は増えたが、人手が追いつかずに予約を断る例も多い。少子高齢化による中長期的な労働力不足に備える意味合いもあり、各社が模索を続ける。

老舗旅館の面影はどこへ――。あわら温泉(福井県あわら市)で、変貌ぶりが話題になっている旅館がある。創業から133年のホテル八木だ。

ホテル八木はバイキング導入などで人手不足に対処している(福井県あわら市)

ホテル八木はバイキング導入などで人手不足に対処している(福井県あわら市)

玄関には外出用のげたが並び、日本庭園も備える。いかにも旅館という雰囲気だが、昨年11月から食事はすべてバイキング形式に変え、宴会の受け付けもやめた。夕食バイキングの場所は、日帰り入浴客と同じだ。

家族連れの獲得には成功したが、以前の姿を知る客が不満をこぼすこともある。「イメージを崩して申し訳ありません」。創業家6代目で、運営を担う八木一夫専務は顧客に謝ることもしばしばだ。しかし、「八木の看板を守るにはこれしかない」と決断した。

「旧来の旅館のサービスを続けていては、ヒトの確保が難しい」。八木氏が目指すのは、少ない働き手で切り盛りし、労働条件も改善できる体制作りだ。旅館の勤務は宿泊客の到着に合わせて夕方から深夜、さらに翌朝にも働き、昼間に休む。体への負担も大きく、敬遠されがちだ。

バイキングの採用、部屋での布団敷きなどをやめることで、朝・夜の仕事量を減らした。宿泊者以外も対象にするランチやスイーツのバイキングで収益を補いつつ、昼間に2~3時間だけ働く主婦のバイトを増やした。

バイトが夕食の準備など他の業務も一部手掛けることで、夜の働き手を抑えた。結果的に、週休2日制も実現させた。

北陸は人手不足で有効求人倍率が高水準で推移している。中でも旅館や外食などの「サービス」は、3.46倍と「建設等」(3.61倍)と並んで高い。社員の確保が難しければ、業務を見直して少ない戦力で賄うか、外部人材に頼るしかない。

石川県・山中温泉のお花見久兵衛(加賀市)は製造業のノウハウを取り入れて、顧客の目に触れない作業を効率化した。取り入れたのはソニー流だ。13年に同社出身のコンサルタントを招き、皿洗いの工程や、歯ブラシなど1500ある物品の管理方法を見直した。

パートを含む社員は約50人。13年当時とほぼ変わらないが、新幹線開業後の繁忙を乗り切り、勤務時間も30分短くした。「旅館は顧客満足を言い訳にして効率化に懸命でなかった。接客と無関係の作業はメスを入れる余地がある」。吉本竜平社長は今も改善点を探す。

「対策を総動員する」。石川県山代温泉の旅館、瑠璃光(同)の萬谷正幸会長は人手不足に様々な手を打っている。4月に8000万円を投じて食事処(どころ)を設けた。部屋食の一部を食事処に切り替え、食事提供に関わる作業を抑えた。

一方、客室係では派遣社員を10人弱採用した。全40人のうち約2割を派遣が占める。同会長は「費用はかかるが、人手不足を理由に予約を断るのは避けたい」と明かす。

旅館への派遣を手がけるワークステーション(大阪市)によると、新幹線開業の前後から北陸の需要が高まり、「賃金や寮の条件は全国でもトップクラス」。厚遇ぶりは人手不足の深刻さを映しているともいえる。

目先を乗り切る人手の確保に加え、先々に備えた業務の大胆な見直し、そして収益の確保。3つを同時にこなす経営力が必要になっている。(金沢支局 国司田拓児)

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