サムスン、中国BYDに接近 EV用半導体供給 - 日本経済新聞
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サムスン、中国BYDに接近 EV用半導体供給

韓国のサムスン電子は15日、中国自動車大手の比亜迪(BYD)に出資すると発表した。出資比率や投資額はまだ決まっていないが、韓国紙は30億元(約480億円)程度で2%の持ち分を確保するとの見通しを報じた。電気自動車(EV)などのエコカーで中国市場をけん引するBYDに接近するサムスン。背景には車載用半導体など自動車部品事業が軌道に乗っていない危機感がある。車載用電池の販促に向け、中国政府の指定を受けたいのではとの見方も出ている。

「EV用半導体事業の強化が主な目的。今後、多様な事業協力を協議していく」。サムスンは同日、BYDへの出資についてこうコメントを出した。BYDも同日、上場する深圳証券取引所を通じてサムスンとの交渉を認めた上で、「双方でEV関連事業の持続的な発展を推進したい」との発表文を公表した。

協業の柱となる中国のエコカー市場は急拡大中だ。政府の手厚い補助金を受け、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数は15年に約33万台と前年の4.4倍に達した。

そんな急成長市場をけん引するのが、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社も株主に名を連ねるBYDだ。同社は15年12月期にEVとPHVを合計5万8千台販売、今期も12万~15万台を計画する。制御に欠かせない半導体や電子部品の調達量も膨大。そこにサムスンは目をつけた。

サムスンはスマートフォン(スマホ)などで使われるメモリー半導体では世界トップシェアを握るが、成長市場の車載用では存在感がない。半導体だけではない。グループでリチウムイオン電池を手掛けるサムスンSDI。同社はスマホ向けに支えられ同電池で世界トップシェアを握るが、EVやPHVで使われる車載用では世界6位にとどまる。いかにてこ入れするか。

実は中国での車載用電池に限っていえば、残された時間はあまりない。

「また今回もダメだった」。北京にあるサムスンの中国法人オフィス。6月下旬、中国政府との折衝を担当するチームの間でため息が広がった。車載用電池メーカーとしての国の指定を受けようと申請したが、却下されたのだ。

サムスンは昨年、中国の陝西省西安に電池工場を完成させたばかり。現地の自動車メーカー向けに車載用電池を供給したいが、商談を有利に進める上でも「指定メーカー」のお墨付きは得たい。これまでも数回にわたって申請したが、すべてはねられてきた。これまでに指定されたメーカーは約60社。そのほとんどが中国企業だ。EV時代の中核部品の国産化を急ぎたい中国政府の意向がにじむ。

今は「指定」を受けていなくても供給はできる。しかし、業界関係者は政府が近く導入する新規定の存在を明かす。エコカー補助金の対象は、指定メーカーから調達した電池を搭載したEVとPHVに限定するとの内容だ。実際に導入されれば、サムスンは蚊帳の外に置かれかねない。

「BYDに出資することで、中国政府の心証を良くしたいのではないか」。今回のサムスンのBYD出資に対しては、こんな観測も浮上する。中国のEV産業の中核を担う企業と手を結ぶのは、指定メーカーの座をつかむための"奥の手"というわけだ。

BYDにとっても、悪い話ではない。同社が得意とするのは安全性は高いが出力に限界があるリン酸鉄リチウムと呼ぶ電池。サムスンは高出力の最先端電池技術を持っている。1回の充電でより長く走行できるようにするために今後、BYDがサムスンから技術を導入する可能性は残る。

昨年12月に電池やディスプレーなど自動車関連部品を総合的に取り扱う「電装事業チーム」を設置し、グループ総出で車載用部品事業の拡大に動き始めたサムスン。BYDとの協業は吉と出るか。EV時代を迎えつつある自動車産業でサムスンが収益源を探る大事な一歩となる。

 ソウル=小倉健太郎、北京=阿部哲也

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